連載の第2回では、政府部門には、財政赤字を拡大させるメカニズムが内在していると述べたが、それは万国共通の問題である。しかし、全ての国で赤字が大きいかというと、かならずしもそうとは言えない。リーマン・ショック以降、多くの国で財政赤字が拡大しているが、よく見ると、ギリシャやスペインのように財政危機にあえぐ国がある一方で、そうではない国も存在する。それはなぜか。

カギは予算制度改革

 主要先進諸国の一般政府レベルの財政赤字と純金融負債の動向を見よう(表1参照)。一般政府とは、国、地方、そして社会保障基金(年金など)を範囲とするもので、各国の財政状態を比較するための基準である。また、純金融負債とは、国債などの借金の残高から公的年金の積立金などの貯金を控除したものである。

 日本とスウェーデンの純金融負債を見ていただきたい。日本の当該債務は、対国内総生産(GDP)比で100%を超えるが、スウェーデンはマイナス20%である。すなわち、スウェーデンは、一国全体で貯金をしているのだ。スウェーデンは、1990年代前半に、今のギリシャのような経済危機に直面し、財政赤字の削減が喫緊の課題となった。そこで、予算制度を抜本的に改革して、財政規律を高めることに成功した。1990年代は、ギリシャやイタリアなどの国でも財政再建が行われたが、その改革は不十分であった。