橘玲の日々刻々 2012年12月25日

[橘玲の日々刻々]
政治はいつもポピュリズム

 こうした「日本オリジナル」の政策が生まれた背景には、違法なヤミ金も正規の消費者金融もいっしょくたにして、「高利貸しという存在自体が社会悪だ」と決めつける『ベニスの商人』的な偏見があります。

 貸金業法の改正を推進したのは“人権派”の国会議員と日弁連でした。彼らの論理は、高利貸しという悪に制裁を加え、国民に節度のある借金をさせれば多重債務者問題は解決するというものでした。たしかに法改正(と最高裁判決)によって、この世の春を謳歌していた大手消費者金融は経営破綻するか、銀行に吸収されて消滅しました。しかしその一方で自殺者は一向に減らず、経済格差や貧困の問題はより悪化しています。

 これは、考えるまでもなく当たり前の話です。

 家計が苦しくなるひとが増えたから、彼らの資金需要にこたえる金融業者が登場したのであって、金融業者をスケープゴートにしても貧困という根本的な問題が解決するわけはないのです。

 イギリスでは、総量規制はもちろん上限金利すらなくても社会は健全に運営されています。それに対して日本では、いくらまでなら借金していいのかを国家が国民に指導しています。改正貸金業法は、「日本人は金銭の自己管理すらできない愚かな民族だ」と世界に向けて公言しているのです。

 総量規制を含む改正貸金業法は、勧善懲悪を好むマスメディアの大きな支持を受けて成立しました。この国では多くの愛国者が“自虐史観”を批判しますが、ポピュリズムから生まれた“自虐政策”に反対するひとはなぜかほとんどいないのです。

参考:作家・橘玲×増原義剛対談「改正貸金業法は失敗だった! ポピュリズムに毒された政治の敗北」

           『週刊プレイボーイ』2012年12月17日発売号に掲載 

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 <執筆・ 橘 玲(たちばな あきら)>

 作家。「海外投資を楽しむ会」創設メンバーのひとり。2002年、金融小説『マネーロンダリング』(幻冬舎文庫)でデビュー。「新世紀の資本論」と評された『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』(幻冬舎)が30万部の大ベストセラーに。著書に『黄金の扉を開ける賢者の海外投資術 究極の資産運用編』『黄金の扉を開ける賢者の海外投資術 至高の銀行・証券編』(以上ダイヤモンド社)などがある。ザイ・オンラインとの共同サイト『橘玲の海外投資の歩き方』にて、お金、投資についての考え方を連載中。

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橘 玲(Tachibana Akira) 作家。1959年生まれ。早稲田大学卒業。「海外投資を楽しむ会」創設メンバーのひとり。著書に『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』『(日本人)』(幻冬舎)、『臆病者のための株入門』『亜玖夢博士の経済入門』(文藝春秋)、『黄金の扉を開ける賢者の海外投資術』(ダイヤモンド社)など。
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