ROICを高く維持するには、自社の競争優位が何かを見極めることだ。他社にはないユニーク性は何か。ブランド、知的財産、マーケティング、生産性……自社独自の競争優位を見出し、それを磨き続ければROICは高くなり、維持していける。

 成長性は、ROICとは相関関係にない。それどころか、成長して、企業規模が大きくなると、経営の複雑性が増し、ROICにマイナスに働くこともある。

──企業が巨大になって、経営が複雑になり、ROICに負の影響が出ることを避けるには、どうすればいいのか。

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 大企業は、グローバルなコングロマリット(事業が多角化した企業)になっている。こうした企業で、経営の複雑性を避けるのに重要なのは、本社の経営者の能力だ。まず、洗練された経営の考え方ができる人材でなければならない。また、自社の各事業に対して深く理解している必要がある。

 そして、企業組織の階層は、できるだけ少なくする。そうすれば、現場からのレポートがタイムリーに経営層に上がる。経営層はこれをスピーディに判断して、指示を与える。そのために経営者には、洗練された経営思考と、事業に対する深い理解が欠かせないのだ。

 また、企業の全部門に、同じ施策を、強制してはいけない。例えば、ある部門で「在庫を減らす」という施策が奏功したとしても、それを会社全体で実行して、同じような効果が出るとは限らない。すでに適正在庫にある部門に、それを強制すれば、無駄な作業を増やすだけとなる。各事業の事情に精通している部門長が、それぞれに必要な判断を下すべきだ。

 こうした考え方から、欧米の企業では、大企業を、小さく独立したカンパニーに分割するというアプローチが、近年トレンドになっている。