史上最高値圏で動く金価格の
背景には、いったい何があるのか?

 足元で金価格の上昇が止まらない。11月17日現在、ニューヨークの金先物市場では、1オンス=約1138ドルと史上最高値近辺における取引となっている。

 昨年の今頃は800ドル台だったことを考えると、ドルベースの金価格は1年間で40%以上も上昇したことになる。市場関係者の中には、金価格の過熱感を指摘する向きもあるものの、当面上昇傾向に大きな変化はないとの見方が有力だ。

 この金価格上昇の背景には、「ドルの価値下落」がある。金の価格は、基本的にドルベースで表示される。金の価値は安定しているため、ドルの価値が下落すると、どうしてもドルで表示される金価格は上昇することになる。

 たとえば、金の価値が一定で、ドルの価値が10%下落すると、ドルで表示される金の価格は10%上昇することになるわけだ。

 また、基軸通貨であるドルの価値が今後下落すると思えば、今のうちにドルを売って金に乗り換えることが有利になる。そうした思惑が市場で定着すると、多くの投資家は、逃げ遅れないようにドルから金へとシフトする。その結果、金価格の上昇が続くことになる。

 そうした動きは、すでに一部の新興国の中央銀行にまで拡大しているようだ。

 また、金価格上昇の要素として忘れてはならないのが、低金利の長期化予測と潤沢な資金だ。低金利が長期化すると予想されるため、潤沢な資金の一部が、収益チャンスを求めて金市場に流れ込んでいる。それが、金価格の上昇をさらに加速しているのである。

 問題は、今後ドル安の思惑に歯止めがかからないと、価格上昇は金だけに留まらず、原油やガスなどの資源価格全般の高騰につながる懸念があることだ。