橘玲の世界投資見聞録 2012年12月27日

[橘玲の世界投資見聞録]
中国・成都に見る、異常な不動産バブル発生のメカニズム

土地が地方政府の財源

 中国で不動産開発が過熱するようになった理由は、しばしば指摘されるように、1990年代の税制改革(分税制)で地方政府が財政難に陥り、それ加えて2006年に農業税が廃止されたことで、財源の多くを土地使用税に頼るようになったからだ。その結果、省政府だけでなく、その下の市や県まで不動産開発で税収を確保しようと躍起になった。

 中国では土地はすべて国有だが、その利用は地方政府の裁量に任されている。形式的には地方政府が都市計画を作成し、入札で民間事業者に50~70年の土地使用権を売却するのだが、実態としては地方政府が不動産開発のビジネス主体なのだ。

 世紀城を例にとれば、成都市政府はまず、手狭になった旧市街とは別に郊外に新都心を建設すべく場所を選定し、道路や地下鉄など交通インフラの整備計画を立てる。そのうえでランドマークとなる国際展示場を建設し、地下鉄の開通に合わせて民間のデベロッパー(不動産開発業者)を募るのだ。

世紀城の交差点に立って四方を見渡す(1) (Photo:©Alt Invest Com)

 民間事業者は自己資金だけでは大規模プロジェクトを手がけられないので、巨額のファイナンスが必要になる。市場経済ではこのファイナンスは民間の金融機関が自らのリスクで行なうが、中国では資金の大半は地方政府の仲介により、国有銀行(国有商銀)か、国有銀行から融資を受けた国営の投資機関が手当てすることになる。

 このように中国では、地方政府と国有銀行(国営投資機関)、民間事業者が三位一体となって、権利関係の調整が面倒な市場経済よりもはるかにスピーディに都市開発を行なってきた。「世界の工場」としての輸出産業と並んで、不動産開発が中国経済の原動力になってきたといわれる由縁だ。

世紀城の交差点に立って四方を見渡す(2) (Photo:©Alt Invest Com)

 だがこの“官民共同”の不動産事業には、市場原理による投資の抑制がはたらかないという本質的な欠陥がある。べつに難しい話をしなくても、これはそれぞれのプレイヤーのインセンティブを考えればすぐにわかることだ。

 都市計画を作成する地方政府の幹部は、どこの不動産が値上がりするかを計画段階で知ることができる。彼らはその特権を使って、地下鉄駅に隣接した高層コンドミニアムの最上階など、値上がり確実な物件を先に押さえてしまう。
それに加えて、この取引には1銭の自己資金も必要ない。国有銀行から不動産開発融資を引き出す際に、自分用の住宅ローンもついでに借りてしまえばいいからだ。

世紀城の交差点に立って四方を見渡す(3) (Photo:©Alt Invest Com)

 事業計画が公表され不動産開発が始まれば、投機資金の流入で物件の完成前から不動産価格は大きく上がるだろう。そうなれば、先回りして購入した投資物件の含み益を担保に国有銀行からさらに融資を引き出して、別の「特別物件」を買えばいい。こうした不動産取引を繰り返すことで、中国の中央政府・地方政府の高官は短期間で億万長者になっていく(不動産開発資金を融資する金融機関幹部も同じ役得にありつくのはいうまでもない)。

 入札に臨むデベロッパーは、地方政府や金融機関の幹部のための物件を用意し、人脈を駆使してライバルよりも有利に立とうとする。だがプロジェクトの落札にもっとも重要なのは、地方政府の面子が立つような派手な計画(超高層ビルなど)だ。不動産開発はたんなる利殖の手段ではなく、自らのプロジェクトが他省や他の都市を圧倒すれば、それが中央政府や省政府内での権力の源泉になる。このようにして、計画は予定調和的に大型化していく。

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 <執筆・ 橘 玲(たちばな あきら)>

 作家。「海外投資を楽しむ会」創設メンバーのひとり。2002年、金融小説『マネーロンダリング』(幻冬舎文庫)でデビュー。「新世紀の資本論」と評された『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』(幻冬舎)が30万部の大ベストセラーに。著書に『黄金の扉を開ける賢者の海外投資術 究極の資産運用編』『黄金の扉を開ける賢者の海外投資術 至高の銀行・証券編』(以上ダイヤモンド社)などがある。ザイ・オンラインとの共同サイト『橘玲の海外投資の歩き方』にて、お金、投資についての考え方を連載中。


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橘 玲(Tachibana Akira) 作家。1959年生まれ。早稲田大学卒業。「海外投資を楽しむ会」創設メンバーのひとり。著書に『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』『(日本人)』(幻冬舎)、『臆病者のための株入門』『亜玖夢博士の経済入門』(文藝春秋)、『黄金の扉を開ける賢者の海外投資術』(ダイヤモンド社)など。
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