鶏胸肉を食べなきゃいけないわけではない

 タンパク質食材の超代表格ですから、除脂肪食材として推さないわけがありません。ただ、もうおわかりの通り、部位によっては脂質が多く除脂肪の効果が得られにくいものもあります。牛なら霜降りより赤身、豚ならバラやロースよりヒレ、鶏なら皮を剥いだモモや胸(胸はベストですが、モモも十分に低脂肪です)。ほかにも馬、鹿などの肉も絞れているので(低脂質高タンパク質)、除脂肪を爆速させてくれます。

 健康面を留意すると、牛や豚と比べたときに、腎臓への負担が少ないことから鶏肉を選ぶほうがいいという考え方があります。となると、アミノ酸スコアや価格帯を含め「やっぱり鶏胸肉が最強」と思ってしまうかもしれませんが、それだけに縛る必要は全くありません。

 鶏モモ肉だって皮や余分な脂肪を落とせばかなり低脂質。牛や豚も満遍なく食べるほうがさまざまな食材からタンパク質を摂れるため、アミノ酸組成の偏りに対するリスクヘッジになります。まるで資産運用の分散投資です。

 部位を考えたら、次は調理法。たっぷり油を使って揚げたり、バターなどの脂質を添加し風味を増したり、そのような方法は除脂肪という目標に対する手段としては向いていません。少量の油で焼く、茹でる、蒸す。食材と調理法とを組み合わせることで、鶏胸一択になりがちなダイエット初心者から卒業しましょう。

 念のため、お伝えしておくと鶏胸一択が悪いわけではありません。毎日、毎食同じものでも飽きないという方も一定数います。いろいろな情報を得たうえで、自分がやってみたい、続けられそうだと思うやり方で取り組んでいただければいいと思っています。ただ、私の経験上一日6回、トータル2キログラムの鶏胸肉を毎日食べ続けたときは、さすがに飽きました。最後のほうは、唾液の分泌もなかなかされず、咀嚼を進めるのに苦戦したものです。でも、当時は飽きたとしてもボディビルの結果につながると思えば乗り切れたのです。