キャンピングカー市場が急速に成長中、シャオミも参戦か

 キャンピングカー販売会社とSUVを販売する自動車販売会社は、ビジネスチャンスを目ざとく見いだし、定年退職した女性をターゲットにして自社商品をすすめた。前者はキャンピングカーで自由自在に旅行できる夢の宣伝に力を入れ、後者はSUVがキャンピングカーより機動性がよく市内でも走行できるメリットなどを強調した。

 キャンピングカーは、中国での正式な名前が「旅居車」だ。旅行と居住の機能を共に備えた車という意味だ。「房車」は、あくまで民間で流行する俗語だ。2001年に中国オリジナルのキャンピングカーが誕生したが、約10年たって、ようやく2012年頃から、市場として形成され始めた。

 中国の全国乗用車市場情報連席会の崔東樹秘書長によれば、中国のキャンピングカー市場はここ数年、急速な成長率を示している。中国産キャンピングカーの販売台数は2017年の5000台から2018年には7374台へ、62%の年間成長率を見せた。2019年にはさらに9177台まで増加し、年間成長率が24%だったという。

 2020年はコロナ禍の影響を受け、前半では販売台数が大幅に縮小したが、後半になってようやくある程度回復し、年間で8718台となった。2021年は、初めて1万台の大台を突破し、前年度比43%増の1万2457台を記録した。

 ただ、メーカーもブランドも150以上もあり、玉石混交の様相を呈している。2021年の年間販売台数が1台の会社は21社もあり、2台の会社も14社ある。10台以下の会社は33社ある。一方、最も販売した上海大通は1471台、2位の宇通房車は1299台、3位は神狐で705台という実績だ。上海大通や宇通房車に追いつこうとしても、その距離はあまりにもありすぎる。

 しかし、上海大通などの地位も安泰ではない。モバイルやスマートデバイスなどの製造・販売で知られる、シャオミ(小米集団)も自動車製造に進出する意向を示している。キャンピングカーからその自動車製造事業を始めるのでは、といううわさも広がっている。

 キャンピングカーは水道、電気、冷暖房、娯楽、通信、休憩などの設備と機能を持ち合わせなければならない。わかりやすく言えば、家のミニチュア版だ。これまでのキャンピングカーのメーカーにとっては、狭い空間で多様な機能の制御、特にスマート制御を実現することは至難の業だったが、シャオミにとっては、自社のスマート製品を直接移植して、キャンピングカーを改造すれば済む。しかも、他の自動車製造分野の新勢力と違って、顧客を探し、市場を開発する必要はない。シャオミはすでに巨大な「米粉(シャオミのファンを指す)」層を育成しており、事前に絞り込めば、有力な顧客層がおのずと水面上に現れてくる。

 中国のキャンピングカーのメーカーにとっては、本当の競争相手が出てくるのはこれからかもしれない。

(作家・ジャーナリスト 莫 邦富)