「選べる出向先が本体よりも少ない。格差を感じる」――。ANAのグループ会社に所属するCAはこう訴える。コロナ前から、ボーナスの金額や、私的な海外旅行に使用可能なチケットの割り当てがANA本体所属のCAより少ないといった格差はあったが、国際線の勤務をこなせば年収は額面で700万~800万円に達する年もあった。

フライト予定読めず、バイト不合格
会社の努力は理解しても「収入は3分の2」

 だがコロナ後は、民間のコールセンターや地方自治体に出向してテレビのニュースなどに取り上げられる本体所属のCAがいる半面、グループ会社所属のCAの出向先は選択肢が少なく、「コールセンターに行けた人なんて、私の周囲にはいない」(前出のグループ会社CA)。親会社のANAホールディングス(HD)は取材に対し「ANA本体とグループ会社で同様に出向先への公募を行っている」と答えたが、伝わっていないのだろうか。

 このグループ会社CAには、手取りの給料があまりに少なく、フライトのない日にアルバイトをして生活費を稼がざるを得ない同僚がいる。コンビニエンスストアや「スターバックスコーヒー」などコーヒーショップの店員、エステティシャンのアルバイトを探すが、先のフライト予定が分かるのは前月の月末。アルバイト先のシフトに入れる日が決められないため、面接で落とされることもあるという。

 事務の仕事を探そうにも、特に新卒で入社したCAにはパソコンの使い方が分からない人がおり、容易ではないのだという。

 日本を代表する航空大手2社だが、コロナ後の経営状態を見ると、ANAHDはJALより苦しい状況にある。

 JALは2009年の経営破綻で公的資金を投入し、金融機関が債権放棄をした。財務面でスリム化できた上に、燃費の良い新しい機材への更新も進んだ。

 一方でANAHDはJAL破綻の間隙を縫って国際線の拡大を進めたが、コロナ後に大きな負担となった。JALは人員削減を否定する半面、ANAHDは20年10月に希望退職の実施を表明した。

 さらに21年10月には下図のように、グループ全体の社員を、20年度末の4万6580人から22年度末に約4万1500人に、そのうちLCCのピーチ・アビエーションや関連会社を除くANAブランドの運航に携わる社員を、20年度末の約3万8000人から、25年度末に約2万9000人に減らす方針を明らかにした。ANAHDは「追加の希望退職ではなく、自然減や業務の効率化で実現する」としている。

 また今年3月には、中距離国際線キャリアのエアージャパンを、ピーチのようなLCCではないが、ANAのようなフルサービスキャリアでもない三つ目のブランドにする計画を公表。既存のANAブランドの路線より運航コストが引き下げられることになる。

 前出のグループ会社CAは「エアージャパンがフルサービスキャリアではなくなるとの方針は報道で知った。不満を持つ同僚は多い。会社からはピーチへの転籍を勧める話も出ている」と話す。ピーチに転籍すれば当然、CAの待遇は下がる。