すでに3月上旬から、感染者が出た一部の小区は封鎖されていた。そのため、1カ月近く部屋に閉じ込められているという人も少なくない。

 そんな中、人口2600万人の上海は今、深刻な食料不足に陥っている。ロックダウンのために物流が止まり、宅配を行う従業員の多くが外に出られない状況だからだ。

 中国では、これまで生活用品から食材まであらゆるものがスマホ一つで簡単に購入でき、すぐに家に届けてもらうことができた。

 しかし、今はそんな食材や日用品のデリバリーは争奪戦になっている。毎朝6時に起き、一日中スマホとにらめっこ。十数個の食材宅配のアプリを使って何とか商品を買おうとしても、何も手に入らない日が多いのだという。「食材はもうすぐ底を突く。どうしよう……」「こんなに空腹でいるのは生涯初めてだ」「これが21世紀の国際大都市の姿か?」など、上海市民からは悲痛な声が上がっている。

4万人の日本人が住む上海
ロックダウン下の暮らしは?

 このような厳しい状況にある上海には、多くの日系企業が進出している。その拠点数は約1万に上り、在留邦人約4万人が暮らす。中国の都市としては最多である。

 今、上海にいる日本人の皆さんはどう過ごしているのか。現地にいる筆者の仕事上の関係者や知人などの日本人や日本人留学生などから、現状を聞かせてもらった。

 5人家族で上海に暮らすビジネスマンの山崎徹さん(仮名、40代)は、上海在住歴が5年以上になるが、今回の事態を「異常だ」と嘆く。

「今は毎日PCRと抗原検査の繰り返し。2歳の娘がいるが、粉ミルクとオムツ、食料が全然足りていない。今、朝はわざと遅くまで寝て、朝食は取らず、お昼と夜の2食だけで済ますようにしている。デリバリーにお願いしても、運ぶ人がいないし、そもそも店もやっていない。手数料を200元(約4000円)を払ってもだめ。他の人は一体いくら出しているんだろう……と思う。(ロックダウンが)いつ解除されるのが全く見えないし、説明がない。もう異常だよ」

 食料不足が深刻なため、宅配手数料の相場は上昇し続けている。ある筆者の友人は、1000元(約2万円)の手数料を支払ったという。そんな高い金額を……と思うかもしれないが、食料が底をつき、外にも出られない中、何とかして必要な品を手に入れなければならない。背に腹は代えられないのだ。

 設計・建築コンサル会社に勤める原田健司さん(仮名、50代)は、ロックダウン下で仕事にも支障が出ていると話す。

「みんなテレワークになったこともあってか、ネットの回線が脆弱(ぜいじゃく)で、オンラインの会議ではよく通信が止まったりして困る。あとは、いろいろな情報が飛び交って、デマか真実か分からない」