COVID-19流行中に“メタボ脂肪肝”が増加Photo:PIXTA

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)禍で“メタボ脂肪肝”リスクが上昇している。

 メタボ脂肪肝――。正しくは代謝異常関連脂肪性肝疾患(MAFLD)という。アルコール性肝疾患や、肝炎ウイルス感染による肝疾患ばかりが注目され、代謝異常による肝疾患を見逃しかねない反省から生まれた疾患概念だ。

 MAFLDは、脂肪肝に(1)過体重/肥満、(2)2型糖尿病、そして(3)脂質異常症(高コレステロール血症)などの代謝異常のうち、どれか一つが重なった状態。放置すると、アルコール性肝疾患より早く肝硬変にまで進行しかねない危険な脂肪肝だ。ただし、日本人の場合は、痩せ~普通体重で発症しているケースが多く、必ずしも過体重/肥満絡みとは限らないところがややこしい。

 大阪市立大学の研究グループは、COVID-19流行前後で大阪市住民の健康診断データを解析。流行中に新たに発症したMAFLDのリスク因子を報告している。

 調査では、2018年から3年間、定期的に健康診断を受けた973人(女性487人、初年度の平均年齢52.5歳、平均体格指数22.8)のデータを利用。流行前(18~19年)と流行中(19~20年)で比較した。

 このうち、MAFLDの新規発症は流行前の22人に対し、流行中は44人へと増加。リスク因子をみると、COVID-19流行前は「習慣的な夜食」が有意に関係していたのに対し、流行中は「1日の飲酒量」と「欠食(1日2食)」がリスク因子だった。

 特にCOVID-19流行中に新規発症した60歳未満の若年層では、食事を抜く人の比率が増加していた。研究者は、リモートワークで内食・宅飲みの機会が増えた現役世代に注意を呼びかけている。

 栄養不足、特にたんぱく質不足が続くと、筋肉や内臓で消費され損なった中性脂肪が肝臓にたまる。朝・昼抜きで仕事にかかり、夕方からだらだら晩酌なんてパターンが肝臓を痛めつけるのは明らかだ。

 この先も「withコロナ」を生き抜くには、1日3食、飲酒はほどほどを習慣化していきたい。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)