宮坂醸造外観宮坂醸造外観 Photo by Yohko Yamamoto

清酒酵母の代表、7号酵母発祥蔵の
リブランディング

 寅と申の年に開催される諏訪大社の御柱祭は、上社の本宮と前宮、下社の春宮と秋宮、それぞれ4本の御柱を山から引いて境内に立てる神事で、1200年以上の伝統を誇る。

 諏訪大社の神鏡「真澄鏡」に由来する「真澄」を醸す宮坂醸造は、1662年に創業。明治維新以降、経営不振に陥り、酒造業を託された宮坂勝さんが酒質を徹底改善し、1943年の全国清酒鑑評会で全国首席に。その後も連続して受賞し、注目を浴びる。

 46年、もろみから新種の酵母が発見され、7号酵母として頒布され、今も全国の酒蔵が使う。

 出荷量が増えて諏訪蔵が手狭になり、82年に標高960mの高台に富士見蔵を竣工。原料米は酒造好適米の新米のみを自社で精米し、さらに酒質を磨く。

 97年に勝さんの孫の直孝さんと妻の公美さんは酒のある食卓を豊かにと、セレクトショップ「セラ真澄」をオープン。センスの良い酒肴や調味料、器を集め、訪問客を増やす。輸出にも力を入れ、海外拠点を設けて日本酒文化の魅力を国内外へ発信する。

 輝かしい業績の一方で、7号以外の酵母を使った華美な香りの吟醸酒や、幅広い製品展開で没個性化した蔵を懸念したのが、2013年に蔵を継いだ息子の勝彦さんだ。

 上質で個性ある食中酒をと、全ての酒を7号酵母に回帰。今までのファンも新客も喜ぶ酒を目指して試作を繰り返し、19年にリブランディング。

 スパークリングや低アルコールなど、7号酵母の凜として穏やかな個性を時代に合わせて進化させる。

真澄 スパークリング Origarami真澄 スパークリング Origarami
●宮坂醸造・長野県諏訪市元町1-16●代表銘柄:真澄 漆黒KURO、真澄 茅色KAYA、真澄 七號、真澄 夢殿、真澄 純米酒奥伝寒造り●杜氏:那須賢二●主要な米の品種:美山錦、山田錦、山恵錦、ひとごこち