パーキングエリアの手前は、思った通りかなり渋滞していた。毎夏、帰省するたびに目にする、おなじみの光景だ。だが、ハンドルを握る荘司実さん(仮名・37歳)は、いつもより重苦しい気持を持て余していた。昨年まで元気に荘司さん家族を出迎えてくれていた両親が、今年はいちだんと老け、弱って見えたのだ。

 「そろそろ将来の介護のことも考えないといけないのかな……」

 すると妻が意外なことを言い出した。

 「前から思っていたんだけど、この際、同居したらどうかな。2世帯住宅を建てて」

 「えっ」

 「私も仕事をしながら家事をするの、大変だし。子どもが熱を出したら会社を休まなきゃならないし。そんなときお母さんが手伝ってくれると助かると思うの」

 「本当にいいのか。だって……」

 荘司さんは次の言葉を飲み込んだ。母親と妻はあまり折り合いのいいほうではない。同居すれば、気の強い母親に気兼ねするのは妻の方だ。それでも彼女は我慢すると言ってくれている――。

 「あのさ、うちの実家ってけっこう庭が広いじゃない。ちょっと建て増しすれば2世帯だって行けちゃうと思うのよ。私の会社からも近いし。あ、あなたは乗り換えが大変かもしれないけど、まあ、我慢してよ」

 なんだ、やっぱり。楽しげに自分の計画を披露する妻に、思わずがっくりする荘司さんだった。

ひそかに増え始めている
「3世代同居」

 毎年実施している、厚生労働省の「国民生活基礎調査」で意外なことがわかった。1986年の調査開始以来、ずっと減り続けていた「3世代世帯」が昨年初めて増加に転じた、というのだ。