200メートル以内に
仮想バス停を配置

――WILLERといえば高速バスのイメージが強い会社ですが、なぜこのようなサービスに進出したのでしょうか。

 私たちは高速バスの会社と思われがちですが、テクノロジーとマーケティングを活用して移動に新たな価値を創造するということで、いろいろなモビリティをやっています。WILLER EXPRESSを始めた当初は、(高速バス業界において)全ての方が安心して移動できるような二拠点間移動サービスがないということで、女性でも快適に移動できるような高速バスを作りました。

東京の道を走るWILLER EXPRESSWILLER EXPRESS(WILLER提供)

 2015年からは京都丹後鉄道を運行していますが、この時もローカル線が社会的な課題で存続の危機ということで、どうやったら地方の移動がスムーズなものになるかということを考えてやってきました。

――公共交通の在り方についてどう考えているのでしょうか。

 移動は距離に応じて、暮らしの足、都市内交通、都市間交通という役割があると考えています。日本の公共交通は都市内交通と都市間交通はしっかりしていますが、ちょっとした移動ができるような暮らしの足の公共交通がないので、自ら運転せざるを得ず、公共交通全体の移動が促進されません。

 そこで、半径2キロ圏内の暮らしの足の移動を提供したいというのがmobiの狙いです。これはまさに(駅やバス停から目的地までの)ラストワンマイルと言われるところです。これより長い距離についてはバスやタクシーが既にありますので、範囲を広げるということは考えていません。

――mobiはどのように使うのでしょうか。

 どこからでもすぐに歩いて行けるよう、エリア内は200メートル以内に「仮想バス停」を配置しています。また利用者の声を踏まえて仮想バス停を増やしたり移設したりもしていまして、例えば渋谷の仮想バス停は、サービス開始当初は100カ所でしたが3カ月で150カ所まで増えています。

「私たちが作った公共交通に乗ってください」ではなく「利用者が欲しいものを作りたい」という思いがありますので、利用者の声で、どんどんサービスをアップデートしていきます。その中で町のさまざまな施設と連携して移動の目的を増やし、その結果として移動総量を増やすことで公共交通の利便性を良くしていくとともに、地域の経済活性化につながったらいいなと思っています。