1300年間生き続ける街
奈良の楽しみ方

 では、私たちが見過ごしてきた奈良とは何だったのか。知られざる寺院などの歴史遺産を通じて魅力が見えてくるのだろうか。「いざいざ奈良」キャンペーンを統括するJR東海東京広報室の古澤秀明室長は、奈良の魅力は過去と現在が同居しているところにあるという。

「遺産と言われることに抵抗のある人もいます。遺産というと過去のものになってしまいますが、今も昔も東大寺は東大寺であって、1300年以上信仰の対象でありつづけることに(地域の人は)誇りを持っている。今回のキャンペーンもそれがコンセプトになっています」

 例えば東大寺の大仏殿は8世紀半ばに創建されたが、平安時代末期に平氏の焼き討ちで焼失してしまった。その後、源頼朝が再建するが、再び戦国時代に戦に巻き込まれて焼失する。現存する大仏殿は江戸時代に再建された3代目である。

 大仏(東大寺盧舎那仏像)も戦乱や自然災害で幾度も損傷しているが、各時代で最新の技術を用いて修復してきた。1300年前の遺産があるからではなく、1300年間生き続けてきた街だから面白いのだ。

「古墳時代、飛鳥時代、奈良時代と、日本の文化が始まった頃の中心は奈良でした。一方、京都は(平安京に遷都した)平安時代から明治になるまで、日本の中心である期間がものすごく長かった。奈良は表舞台にいた期間は短かったのですが、それが(京都や東京に国の中心を譲った)今も続いているというのが特徴であり、他のどこにもない性格の町です」

 キャンペーンのリニューアルに伴い、そうした点を強く打ち出すようになったのはどのような背景があったのだろうか。