スズキは、過去10年間であえて世界2大市場の米国と中国から撤退しており“勝てる地域”への集中を進めてきたが、その結果、現在は販売台数の大半をインド市場に依存する。

 だが一方で、スズキはインドで圧倒的な販売シェアを誇ってきたものの、近年は韓国車メーカーなどを筆頭に追い上げが激しくなっており、従来のように盤石とは言いがたい情勢に陥っている。

 今回の投資計画では、EV新工場だけでなく、ハイブリッド車やエンジン車も含めた生産能力増強を行う点が重要だ。これによって、中長期的には中国をもしのぐといわれるインド市場の成長を取り込むだけでなく、まずは“稼げる”既存車の生産体制を強化し、改めてトップシェアの地位を固めていくことが念頭にあるのだ。

 加えて、EVへの対応も同時に進める。EVシフトについては、インド政府が30年に国内での新車販売の3割をEVにする目標を掲げているが、スズキもこの目標に歩調を合わせる。

 インドにEV新工場を新設することで、スズキとしてのEVシフトはまずインドで先行、それ以外の地域にノウハウを発展させるための“基地化”を進めていくことが俊宏体制の狙いだ。

 なお、EVではトヨタグループとの提携・協力関係も欠かせない。

 例えば、21年7月には、トヨタを中心とする商用車の新技術開発会社「コマーシャル・ジャパン・パートナーシップ・テクノロジーズ(CJPT)」にスズキも参画した。スズキは25年にインドと日本で軽自動車・小型車のEVを投入するという目標に向けて開発を進めているが、こうした提携によって、トヨタやダイハツ工業と電池調達を共通化したり、EVの車台を共用したりといったことも将来的に実現する可能性がある。