しかし各社の輸送需要予測の中身はまちまちだ。2022年度の定期外旅客数予想値が、コロナ前の2018年度実績値と比較してどの水準にあるかを見てみると、近鉄の74.4%が最小で、西武の98.6%が最大だ。このほか、京成の94.1%、小田急の91.3%が大きい。本当に1年以内にコロナ前の9割以上まで戻るのであれば、アフターコロナの想像図は随分変わってくるだろう。

 ただ、大きな回復を期待している事業者は当然、2021年度実績値から2022年度予想値への増加率が高い。例えば京成は29.5%増、南海は27.9%増、逆に固めに見積もっているのは京王の6.8%増、東急の8.6%増、近鉄の9.6%増などがある。東急と近鉄は2023年春の運賃改定を予定しているだけに、利用者数と収入の予測は特に慎重なはずだ。他社の試算が楽観的すぎるのか、どちらに真実があるのかも注目したい。

 最後にこの2年、阪急・阪神HD、名鉄、西鉄の経営を支えた物流セグメントは、引き続き黒字を予想しているものの、輸送需要の逼迫(ひっぱく)が解消されるにつれて減益になるとの見通しだ。

 物流を巡っては近鉄が今年度、持分法適用関連会社である近鉄エクスプレスを公開買い付けによって完全子会社化する方針を明らかにしている。また京成もグループ会社の新京成電鉄を、経営資源の効率的な活用や機動的な意思決定を行うために、株式交換により完全子会社とすると発表。グループ会社、関連会社再編の動きはまだまだ続くはずだ。

【訂正】記事初出時より以下のように訂正します。
7段落目下の見出し:「大手私鉄15社で最終赤字は3社」→「大手私鉄15社で最終赤字は2社」
8段落目:「最終赤字となったのは東京メトロ(約150億円)、相鉄ホールディングス(約134億円)、京成電鉄(約44億円)の3社だ」→「最終赤字となったのは東京メトロ(約134億円)、京成電鉄(約44億円)の2社だ」
8段落目下のグラフにおける「相鉄」の数値:「-134.0」→「18.6」
8段落目下のグラフにおける「メトロ」の数値:「-150.3」→「-134.0」
(2022年5月31日19:11 ダイヤモンド編集部)