解析の結果、探知犬のCOVID-19感染者の特定能力は、感度92%、特異度91%となった。また、陽性的中率(犬がCOVID-19感染者と判定した人に占めるPCR陽性者の割合)は84%、陰性的中率(犬がCOVID-19感染者でないと判定した人に占めるPCR陰性者の割合)は96%だった。PCR陽性者のうち28人は無症候性感染だったが、探知犬はその89%をCOVID-19感染者と正しく判定していた。

 続いて行われた国際空港での実用性の検討では、303人の乗客・乗員が対象とされた。そのうちPCR陽性者は3人のみだった。探知犬の判定は97.7%(303人中296人)の確率でPCR検査の結果と一致し、300人のPCR陰性者の98.7%(300人中296人)を感染者でないと正しく判定した。

 犬が見逃した3人の陽性者のうち1人は再検査の結果、陰性と診断された。他の2人のうち1人は再検査で陽性が確定し、もう1人は陽性である可能性が高いと判断された症例だった。一方、探知犬は4人のPCR陰性者をCOVID-19感染者と判定したが、その4人は再検査でも陰性だった。

 空港での実用性のテストではCOVID-19感染者がわずかであったことから、改めて155人のCOVID-19患者から採取した検体を探知犬に判定させた。すると98.7%をCOVID-19感染者と正しく判定した。この155人が実際に空港の到着ゲートを通過したと仮定すると、探知犬のCOVID-19患者の判定能力は、感度97%、特異度99%になると計算された。

 次に研究者らは、これらのデータに基づいて、一般住民のCOVID-19有病率が40%と1%の場合での、探知犬の陽性的中率と陰性的中率をシミュレーションした。その結果、有病率40%では陽性的中率87.8%、陰性的中率94.4%、有病率1%では同順に9.8%、99.9%と推定され、有病率が高い集団でも低い集団でも、探知犬がスクリーニングに役立つ可能性が示された。

 なお、前記の空港での実証テストは2020年9月から翌年4月という、新型コロナウイルスが野生株からアルファ株に移行する時期に実施された。探知犬のCOVID-19感染者判定力はアルファ株の場合に低下していたが、その理由はトレーニングの際に野生株を用いていたためであるという。著者らによると、「既にCOVID-19感染者特定能力を獲得している探知犬は、数時間再訓練をするだけで、別の変異株の感染者も特定できるようになる」とのことだ。

 犬は、細菌やウイルス、寄生虫の感染時に生成される成分を含む、体内のさまざまな代謝プロセスによって放出される成分の臭いを嗅ぎ分けられると考えられており、がん患者を特定する能力を持つ犬の存在も知られている。著者らによると、犬の嗅覚は機械的な方法で検出可能なレベルの1兆分の1の成分量でも嗅ぎ取ることができるほどだという。

 Kantele氏らは本研究の総括として、「COVID-19感染を確認する手段が限られているような状況においては、感染者を特定する能力を獲得した探知犬が役立つと考えられる。ただし、本研究の結果は有望ではあるものの、リアルワールドで有効性を検証する必要がある」と述べている。(HealthDay News 2022年5月17日)

https://consumer.healthday.com/b-5-17-dogs-accurately-sniff-out-covid-19-at-airports-2657311354.html

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