日本でも大きな話題に
新年早々の「言論弾圧事件」

 年明け早々、中国では、週刊紙「南方周末」が当局の介入により記事改ざんを強要されたという事件が取り沙汰されている。

「南方周末」とは、広東省広州市に本社を置く南方報業伝媒集団が発行する、リベラルな報道で知名度の高い、木曜日発行の週刊新聞だ。2009年12月には当局の許可なくオバマ大統領を単独取材したことが問題視され、編集長が降格処分を受け話題になった新聞だ。しかし、市民目線で正義を問う報道姿勢、圧力にも屈しない記者の質と記事内容は、今もって高い評価を得ている。

 もともと中国のメディアは、中国共産党の思想や路線の宣伝、教育、啓蒙を目的として始められた。しかし近年は、メディア産業の発展に伴い、紙面や内容の差別化・多元化が図られ、編集部や記者の独自の視点や主張を織り交ぜるメディアもポツポツと現れるようになっている。そのような状況下で、良心ある新聞として国民的信頼を得ている「南方周末」の記事改ざん事件は、大きな波紋を呼んでいる。

 この事件は、当局が「南方周末」編集部に対し、新春特別号である1月3日付の社説を含む記事の差し替えを強要したものだ。問題の“当局”とは、中国共産党中央宣伝部の地方組織である広東省宣伝部。広東省内の新聞・出版物・テレビ・映画・インターネットなどのあらゆるメディアにおける、党に不利益をもたらす情報の監視を行っている。

 現在、中国のネット上には、その内幕を暴露する記事や掲載不可となった記事が多数出回っている。そこからわかるのは、発行間際の書き換えではなく、かなり前から計画的に行われていたということだ。あるサイトは次のように暴露する。

<同編集部は12月初旬に2013年の新春特別号の企画を立案し、編集長にこの企画を報告する。ところがしばらくして、編集長から来た返事は「タイトルを変更してくれ」というものだった。もともとは「過河」(川を渡る、の意)、そこから「中国夢」(中国の夢)にタイトルが変わった。>