イライラしたり、緊張やストレスが続いたりすると、交感神経が優位に働き血管が収縮して血流が悪くなります。通常は、夕方から夜にかけてはリラックスして副交感神経が優位になりますが、緊張状態が続いて交感神経が高まったままだと血管は収縮したまま。長時間血流が滞ってしまい、痛みへとつながるのです。腰痛だけではなく、人によっては頭痛や肩こり、全身のだるさなど、様々な不快な症状を引き起こします。

 もし、原因不明の痛みに見舞われたら、心にストレスや心配事を抱えていないか考えてみましょう。思い当たった場合は、まずは体を休めてリラックスすること。寝る前に軽くストレッチをしたり、ゆっくり時間をかけて入浴したりといったことや、不規則な生活をやめてしっかり睡眠をとることも重要。一時的な自律神経の乱れなら、このような対処法で改善できるはずです。自律神経が整えば、血流もよくなって脳の働きも向上します。物事を冷静に判断し、自然とストレスや心配事を前向きに転換できるようになるのです。

「病気」のネット検索が新たな「病気」をつくる
「病気」をつくる「サイバー心気症」とは

 誰しも一度は体の不調の症状をネット検索したことがあると思います。最初は、軽い気持ちで検索したのに、思いもよらない重病の可能性があるという記事を読んでしまい不安になったことはありませんか?

 例えば、腰に不快感を覚えて「腰 違和感」などと検索してみたときに「がん」などの症状と一致していたら……。あらぬ心配が一気に沸き上がり、頭の中が病気のことでいっぱいになってしまうでしょう。こういったインターネットやテレビなどに氾濫する様々な情報にまどわされて心を病んでしまうことは「サイバー心気症」と呼ばれています。ひどい場合は自分が病気だと思い込み、体に痛みとして症状が出てくることまであります。

 病院へ来院する患者さんのうち、実際に病名がつくような方は1割ほどで、残りの9割の患者さんは特に疾患のないような体調不良の場合がほとんど。病気の検索をして心を病んでしまうくらいなら、すぐに病院へ向かうほうが賢明です。本当の病気なら早期に治療を開始できるし、そうでない場合は、心の安堵(あんど)を得ることができます。

 病院へかかる目安としては、体の不調が2週間続くような場合。短期間の不調なら質のよい睡眠をとり、正しい入浴やストレッチなど本書で紹介する自律神経を整える方法で改善することがほとんどです。

「自律神経の乱れ」と「うつ」の大きな違い
自律神経の乱れは体の不調

 めまいや倦怠感(けんたいかん)、肩こり、腰痛、頭痛、動悸などで受診すると「自律神経失調症」という診断名がつけられることがあります。これは正式な病名ではなく、自律神経の乱れが原因と考えられる上記の「症状」を指し、これらの症状はあるが、特に身体に異常がみられない場合に用いられます。

 この自律神経の乱れは女性の場合、特に出産後のホルモンバランスの乱れによって起こることが多いです。状況や家庭の事情によって受診するのはなかなか難しいかもしれませんが、産後体に違和感があるときは我慢せず専門医に相談できると身体的にも精神的にも楽になるでしょう。