「フランス人は、他の国に比べて乳製品や肉といった脂肪の消費量が多いにもかかわらず、心臓病などの生活習慣病による死亡率が低い。その要因は、ポリフェノールが多く含まれた赤ワインをよく飲むからだ」。

 この説がフレンチパラドックスと呼ばれる説で、当時は注目されたものの、その後の研究で「赤ワインに含まれているポリフェノールと、心臓病を低下させる因果関係はない」として、否定的な意見が多くなりました。

 とはいえ、1990年代頃から、ポリフェノールの健康性が世界的に注目されることになりました。現在ではさらに研究が進み、その健康性が改めて見直されています。ポリフェノールは、抗酸化作用が強く、動脈硬化などの生活習慣病予防に働きかけるほか、老化予防に作用することもわかってきました。

 ちなみに、抗酸化作用とは、「体の中でできた活性酸素を除去し酸化を抑える働きのこと」です。この抗酸化作用の働きが、がんや生活習慣病といったさまざまな病気から私たちを守ってくれるともいわれています。ポリフェノールは、木の葉、樹皮、種子、果実の皮など多くの植物に含まれており、植物が光合成する際に生成され、色素や渋み、苦みの成分です。

 また、「ポリフェノール」という名前は総称であり、食物によってカテキン、アントシアニン、ケルセチン、クロロゲンサン、イソフラボンなど、呼び名も変わります。ちなみに茶葉に含まれているカテキンもポリフェノールの一種で、一般に「茶カテキン」と呼ばれています。

 食物全体でみると、わかっているだけで実に5000種類以上のポリフェノールがあるともいわれています。多く含まれている食物として、緑茶、ココア、ブルーベリー、チョコレート、コーヒーなどが挙げられます。このことから考えても、日本人は緑茶を飲むことで日常的にポリフェノールを摂取しているといってよいでしょう。

茶カテキンもポリフェノール

 ポリフェノールには、「渋み、苦み」という特徴があるとご紹介しました。たしかにコーヒーやチョコレート、緑茶といった食品は種類にもよりますが渋みや苦みが際立っているものもあります。緑茶独特の苦渋味はみなさんが経験したことのある味でしょう。

 茶カテキンは茶ポリフェノールとも呼ばれ、茶葉の中で最も多く含まれている成分です。ちなみに日本で栽培されている茶葉中には、乾燥重量比で8%~20%ほど、インドなどで栽培されている紅茶品種の茶葉には、20%以上も含まれるものもあるといいます。