急拡大する半導体の需要
TSMCの5月の売上高は約8400億円に

 中長期的に各国でDXが加速し、家庭や生産施設ではIoT技術の実装が急速に進む。

・自動車の電動化や自動運転技術の利用
・通販や金融などのオンラインサービス
・ビッグデータの収集と分析、利用のためのデータセンタ建設
・クラウド・コンピューティング・サービスの利用
・テレワーク、5G通信の普及に伴う基地局増設

 なども半導体需要を押し上げる。

 脱炭素を背景とする蓄電池需要もパワー半導体需要を急拡大させている。一部では、半導体原材料のシリコンウエハーの段階から、在庫を押さえにかかるメーカーも出始めているようだ。

 自社専用に設計された、あるいは製品ごとに特別に設計された半導体ではなく、汎用型の半導体を用いて完成品の生産を目指す企業も急増している。「産業のコメ」としての半導体の重要性は一段と高まっている。

 そうした環境から、台湾積体電路製造(TSMC)の業績は急拡大している。2022年5月単月の連結売上高は、前年同月比で65.3%増え、1857億500万新台湾ドル(約8400億円)に達した。

 TSMCや台湾の聯華電子(UMC)、韓国のサムスン電子など大手ファウンドリーは、相次いで受託製造料金の値上げを発表している。中国のゼロコロナ政策やウクライナ危機により増加するコストの吸収と、過度な需要の膨張を抑えるために値上げは今後も続くだろう。

 また、半導体を製造する装置の供給も遅れている。最先端の回路線幅5ナノメートル(ナノは10億分の1)のチップ生産に重要な、極端紫外線(EUV)露光装置を生産できるのはオランダのASMLのみだ。ただし、ASMLが用いるレンズなどの生産能力が不足しているため、最先端の半導体製造装置の供給が、半導体の需要拡大のスピードに追いついていない。

 汎用型の製造装置に関しても同様で、半導体不足が製造装置の供給遅延の要因にもなっている。