「選手同士のコミュニケーションで『こういうふうにしてほしい』と言っていますけど、チーム全員でそれを共有できているかというと、そうではないところが多いし、そこは必要かなと」

 決して批判を展開しているわけではない。A代表デビューからわずか7試合目ながら大きなインパクトを残し続け、森保ジャパンにおける存在感を一気に増幅させている25歳は、攻撃陣の中心を担う自覚と責任を込めながら、現状に対する危機感を言葉へ転換し続けた。

 年間を通して活動できるクラブチームほど緻密なものではないにせよ、攻守における約束事は代表チームにも必要不可欠だ。そして、それらをデザインするのはもちろん代表監督となる。船出からまもなく4年。森保監督が攻撃面で何も施さなかった跡が図らずも明らかになった。

 大きな衝撃を与えたからか。オンライン会見の最後には約束事に関して、あらためて三笘へ質問が投げかけられた。ワールドカップ予選を戦ってきた今までは時間がなかったのか。チームとしての意識がそこへ向いていなかったのか。解決するためにはどうすればいのか、と。

「僕はアジア最終予選の途中から代表に入りましたけど、当時は本当に時間がなくて、コンディションを優先しないといけない、というのはありました。チームとして落とし込む時間がなかったわけではないけど、そこへ持っていけるような雰囲気はなかったですね」

 三笘はA代表に初招集された昨年11月シリーズをこう振り返った。しかし、アジア最終予選の序盤でつまずき、7大会連続7度目のワールドカップ出場へ向けて一戦必勝だった時期とは異なり、今回の6月シリーズは計12回の練習を積めた。三笘は「それでも」とこう続けた。

「今回はけっこう時間もあって、みんなのコンディションもよかった。その中でコミュニケーションを取りながら、相手に対するチームとしての戦術というところで狙いはありましたけど、狙いの細かさといった部分は全然足りていない。ピッチ内での自分たちの対応力であるとか、そういったところにいってしまったところがあるので、いろいろな人たちで議論してやっていく必要があると思う」

「勝っているチームはいじらない」
監督のこだわりには批判も

 森保監督の采配に対して内部、すなわち選手から声が上がるのは今回が初めてではない。金メダル獲得を目標に掲げながら、4位に終わった昨夏の東京五輪直後。オーバーエイジとして参戦し、キャプテンを務めたDF吉田麻也は出演したテレビ番組でこう語っている。

「大会を通して言うと、6試合を戦っていく上で、できればローテーションしてほしかった、というのはありますね。最後の試合は僕もそうですけど、選手たちがかなり疲弊していたし、疲労からくる判断力や集中力の欠如というものがあったと思うんですよね」

 グループリーグ初戦から銅メダルをかけた3位決定戦までの6試合を、森保監督に率いられたU‐24日本代表は全て中2日の過密スケジュールで戦った。吉田が言及した「ローテーション」とは、選手をある程度入れ替えながら戦っていく方法を指している。

 東京五輪では吉田とともにオーバーエイジで参加したMF遠藤航、24歳以下の選手ではMF田中碧、GK谷晃生、攻撃陣をけん引した堂安律、久保建英の両MFが全6試合に先発した。

 中2日では疲労やダメージが抜けにくく、日本特有の高温多湿の過酷な気候が追い打ちをかけた。久保の3試合連続ゴールなどで、グループリーグを3連勝で突破した日本は決勝トーナメントで失速。3試合で挙げたゴールは、メキシコとの3位決定戦で一矢を報いた三笘の1点だけだった。

 先発メンバーを固定した戦いへの是非は、当然ながら森保監督の耳にも届く。非が占める割合が圧倒的に多かった中で、指揮官の反応は頑固とも、いい意味での鈍感ともいえるものだった。例えば東京五輪における選手起用を問われたときには、こんな言葉を返している。