バイデン大統領「空母率いて生身さらす」初来日の真意、IPEFに懸ける思惑とは米空母「ロナルド・レーガン」 Photo:PIXTA

米国のバイデン大統領が、就任後初めて来日し、IPEF(インド太平洋経済枠組み)の始動を宣言した。このときバイデン氏は、空母2隻を伴っている。軍事力と外交力を総動員したバイデン氏が訪日に懸けた思いと、彼が実現しようとするIPEFについて論じていこう。(安全保障アナリスト/慶應義塾大学SFC研究所上席所員 部谷直亮)

バイデン大統領が来日
空母2隻を率いた真意とは

 バイデン大統領が初訪日し、バイデン政権では2度目となる日米首脳共同声明が行われたが、過去にない異例の措置が行われた。空母打撃群(1隻の空母と数隻の水上艦艇と1隻の潜水艦を1グループとして構成される部隊)を2つこの地域に展開させ、基地祭により多くの群衆がにぎわっている横田基地にバイデン大統領が生身をさらした。

 それから1カ月が経過し、こうした軍事力と外交力を総動員した異例の訪日外交がIPEFという新たな知的財産(知財)における対中攻勢を実現するためだったということが明らかになってきた。

 このIPEFはバイデン訪日時に東京で始動が宣言された、日米豪印を中心とする13カ国が参加する経済連携枠組みだ。従来の関税を中心とする貿易協定ではなく、知財などのルール作りを中心とするユニークな枠組みである。

 つまりバイデン政権は、軍事力を総動員し、大統領の生身の体さえ使って、知財を中核とする新しい経済枠組み、IPEF実現に動いているというわけだ。本稿では、訪日に懸けたバイデン政権の動きと、そこまでして実現しようとするIPEFについて論じる。

バイデン政権が投じた膨大な対日攻勢
空母を展開させ、横田基地の観衆に身をさらす

 今回のバイデン大統領の初訪日は、前例のない複数の軍事・外交手段が“コンボ”として発揮された。個別の施策が全て連携していたのだ。