急拡大する新しい半導体関連需要
本邦企業と日本政府の取るべき策とは

 ウェブ3.0によって、新しい半導体部材や製造装置の需要が急速に高まる。メタバースに加えて、自動車の電動化やIoT機器の導入、脱炭素、ビッグデータ利用の増加などによっても、これまであまり半導体が用いられてこなかった機器に対しても、多種多様なチップが搭載されるようになる。

 ファウンドリーと半導体の製造装置分野では、先端分野での取り組みが加速している。アップルが設計・開発したチップの受託生産を行う台湾積体電路製造(TSMC)は、オランダの半導体製造装置メーカーであるASMLから次世代の露光装置を調達し、顧客の技術革新に必要な回路形成を実現すると表明した。ASMLは米コネチカット州での追加投資を発表。「ナノからピコへ」というように半導体製造の革新は加速することはあれ、止まることは考えられない。

 また、アップルは米中対立の先鋭化など、脱グローバル化への対応も強化しなければならない。6月15日、アップルをはじめとする米IT先端企業のトップが連名で、「中国対抗法案」を早期に成立させ半導体生産体制強化を財政面から支援するよう、ペロシ下院議長やシューマー上院院内総務らに書簡を送った。

 そうした環境下、世界のサプライチェーンの再編も勢いづくだろう。半導体の性能向上と、その実現に欠かせない部材や製造装置の創出が、各国の安全保障や経済運営により大きなインパクトを与えるようになる。

 1990年代以降、わが国はデジタル化に取り残された。ウェブ3.0の時代が幕を開ける中、本邦企業はしっかりとしたビジネスモデルを確立しなければならない。各企業は先端分野におけるモノづくりの力を徹底して磨く必要がある。

 加えて、日本政府が半導体の部材や製造装置、さらにはマイコンやパワー半導体など本邦企業が国際競争力を維持している分野に、支援を迅速かつ他国に見劣りしない規模感で実施することも不可欠だろう。