クロワゼット通りに掲げられた広告クロワゼット通りに掲げられた広告

『ベイビー・ブローカー』は、古びたクリーニング店を営みながらも借金に追われるサンヒョン(ソン・ガンホさん)と赤ちゃんポストがある施設で働く児童養護施設出身のドンス(カン・ドンウォンさん)、ある土砂降りの雨の晩に赤ちゃんポストへ赤ん坊を預けた若い女ソヨン(イ・ジウンさん)の3人を中心に物語が始まっていきます。

カン・ドンウォンさん(左)、イ・ジウンさん(中央)、ソン・ガンホさん(右)カン・ドンウォンさん(左)、イ・ジウンさん(中央)、ソン・ガンホさん(右)

 サンヒョンとドンスの裏家業は、赤ちゃんポストに預けられた赤ん坊をこっそりと連れ去り売るブローカー。赤ちゃんポストへ預けたことを翌日思い直して戻ってきたソヨンが、施設に赤ん坊が居ないことに気づき警察に通報しようとしたため、サンヒョンとドンスは仕方なく事の経緯を白状します。2人は「赤ちゃんを大切に育ててくれる家族を見つけようとした」という言い訳し、それにあきれるソヨンでしたが、彼らと共に養父母探しの旅に出ることにするというストーリーです。

12分間続いた
スタンディングオベーション

スタンディングオベーションに包まれる是枝監督スタンディングオベーションに包まれる是枝監督

 是枝監督にとって今年のカンヌ国際映画祭は、2018年に行われた同祭で『万引き家族』がパルムドールを受賞して以来の招待。公式上映が行われた5月26日は、是枝監督が今度はどのような映画を作ったのかという期待感で満ちていました。

 レッドカーペットを歩く是枝監督はアルマーニのタキシードにサングラス姿。同じくカンヌ入りしたソン・ガンホさん、カン・ドンウォンさん、イ・ジウンさん、イ・ジュヨンさんと共に映画祭の会場であるパレ・デ・フェスティバル・エ・デ・コングレのメーン上映会場、リュミエール劇場へ続く階段を登っていきました。会場に向かう前の心境を聞かれた是枝監督は「毎回持ってくる作品も違いますし、チームも違うので、何度来てもいつも新鮮な思いで臨んでいます。今回は特に会場へ向けての出発場所となるホテルの壁に作品の垂れ幕がかかっているので、ちょっと背筋が伸びる思いです。でも、作品の出来上がりには自分的にとても満足しているので、そんなに何かが負担になったり、過剰な期待をしたり、それで落胆したりという、今回はそこは卒業できたのかなと思っています」とコメントを出しました。

レッドカーペット上での是枝監督と出演者レッドカーペット上での是枝監督と出演者

 作品自体は、上映後に客席からのスタンディングオベーションが12分間鳴り続く状況に。私たち日本人記者を対象にした上映終了後の囲み取材では「ちゃんと笑うところで笑い声が聞こえて、隣のソン・ガンホさんと手を握りあって最後まで僕自身上映を楽しめたので良かったのではないかなと思います」と振り返りました。