研究対象者は2020年10~11月にかけて、webを通じて東京と神奈川から募集された60歳以上の健康な地域住民。COVID-19や心疾患・呼吸器疾患の既往者、認知機能の指標である日本語版ミニメンタルステート検査(MMSE-J)が30点中24点未満の人を除外した90人が参加。これを無作為に、ダンス群、ノルディックウォーキング群(以下、歩行群と省略)、対照群の3群に分類した。なお、全員に分岐鎖アミノ酸(BCAA)を含む菓子(BCAAとして約8gを週3回摂取)による栄養介入を行った。

 ダンス群と歩行群に割り当てられた人には、1回30分(準備体操と整理体操を含めて45分)、週に3回、4週間にわたる継続を求め、実施回数が9回未満の場合は解析から除外した。ダンス群には、120~125ビートの曲に乗せたダンス動画が収録されているDVDを4枚支給し、1週間に1枚のペースで続けてもらった。

 プロトコルから逸脱した2人(歩行群と対照群の各1人)を除く88人の平均年齢は67.81±5.64歳で、29.55%が女性だった。ベースライン時点では、年齢や女性の割合、MMSE-Jスコア、MoCAスコア(認知機能の評価指標)、FABスコア(実行機能の評価指標)、教育歴、就業状況、疾患有病率、BMI、SMI(骨格筋指数)、歩行速度、握力、ふくらはぎ周囲長など、評価した全ての項目について、有意な群間差がなかった。

 4週間の介入中に歩行群の2人が脱落し、最終的な解析は86人で行われた。認知機能の指標であるMoCAスコアのベースラインからの変化量は、ダンス群+2.0667点、歩行群+0.7037点、対照群-0.2414点であり、ダンス群は歩行群(P=0.0135)や対照群(P=0.0000)より、改善幅が有意に大きかった。歩行群と対照群の群間差は非有意だった。

 実行機能の評価指標であるFABスコアは、同順に、+0.7333点、+0.2963点、-0.5862点であり、ダンス群(P=0.0006)や歩行群(P=0.0369)は、対照群より改善幅が有意に大きかった。ダンス群と歩行群の群間差は非有意だった。

 このほか、歩行速度や模倣機能について、ダンス群の方が歩行群よりも有意に大きく改善していた。筋肉量や筋力の変化量は、群間の有意差がなかった。ただし、かかと上げテストは、ダンス群、歩行群ともに対照群よりも有意に大きく改善していた。また、ダンス群は視空間認知機能の改善幅が、歩行群や対照群より有意に大きいなどの違いも認められた。

 これらの結果を基に著者らは、「COVID-19パンデミックに伴い自宅での時間が長くなり運動量が減りがちな状況において、屋内で行えるダンスが認知機能を効果的に維持・改善し得る」と結論付けている。また、「若いころにダンスをする機会が少なかっただろう日本の高齢者にも、ダンスは受け入れられた。この事実から、ダンスは日本人の認知機能や身体機能を向上させる、強力なツールになると考えられる」と付け加えている。(HealthDay News 2022年6月27日)

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