一言で表すとそれは、「そのテーマについての全体像が掴みやすい」ということだ。自らの知力を高めていくためには、多様な視点からテーマをさまざまに照射することで全体像のイメージを持つ必要がある。しかし、ウェブの記事だけではさまざまなメディアを横断的に探索する必要があり、「多様な視点」を十分に得ることは難しい。

 その点、優れた書籍は1冊の中で、「アウトライン→視点→全体像」という流れを全部用意してくれる。よって書籍は、「物事についての全体像を知る」うえで最も良質なガイドになってくれる可能性が高いのだ。

◇本の具体的な読み方

 ここからは1冊の本を読むときのポイントを6つ紹介する。1つ目は、付箋やハイライト機能を使い、気になる文章をチェックすることだ。「この本はどのように自分の知肉(血肉)になるだろうか」という意識を持ち、気になるところにすかさず付箋を貼る。電子書籍の場合はハイライト機能で代用しよう。

 2つ目は、エピソードや会話など読みやすく面白い部分に引きずられないことである。抽象的で難しそうな部分こそ、丁寧に熟読するべきだ。

 3つ目は、「メモアプリ」に重要部分をコピペして整理することである。ハイライトや付箋を貼っただけで終わらせないことが大切だ。

 ただし、いい本ほど付箋の量が多くなり、まとめるのが面倒になってしまうジレンマがある。そこで本書では付箋をつけた内容を「メモアプリ」に保存しつつ、同時に本を読み進めるスタイルを勧める。読んでは休み、休んでは読み、と気楽に繰り返すことが4つ目のポイントだ。

 5つ目は、「自分がその文章の何に感銘を受け、なぜ保存すべきと感じたのか」を短い覚え書きで添えておくことだ。「これって○○のニュースにもつながるのでは?」などと、何にピンときたのかを具体的に記しておくことが重要だ。

 6つ目は、参考文献リストや引用を参考に「広げていく読書」を心がけることである。いい本は参考文献や引用もしっかりとつくられていることが多い。それらを頼りに面白そうな本に手を伸ばし、芋づる式にそのテーマについての領域を広げていく。そうすれば、自分の中に「ふくらみのある知」を持つことができ、立体的なイメージを描けるようになるだろう。