「大学卒業イコール失業者生活の始まりだ」

 中国では、全国を対象とした失業率ではなく、都市部の調査ベースによる失業率が発表されている。21年10月に4.9%だった失業率は、11月以降に急上昇。特に、ゼロコロナ政策による物流・人流寸断のインパクトは大きく、22年4月に失業率は6.1%に達した。5月は5.9%に低下したが、状況は楽観できない。

 特に、16~24歳の失業率が上昇し続けていることは深刻だ。18年5月に9.6%だった若年層の失業率は、20年2月に13.6%に上昇。22年5月の水準は18.4%と統計開始来の最高水準を更新した。若年層が労働市場から勢いよくはじき出されるかのような構図が鮮明になっている。

 中国では科学技術の向上のために高等教育が強化され、22年の学部卒業生は1000万人を超えるといわれている。新卒学生の多くは、外国語やプログラミングなどの専門スキルを身に付けるなどしてより良い条件での就職を目指す。しかし、本来であれば成長期待の高いIT先端分野の企業であっても、新卒学生を雇い入れることが難しくなっている。IT企業で内定の取り消しに直面する新卒学生も増えているようだ。

 中国のSNS上では、「大学卒業イコール失業者生活の始まりだ」などと将来の悲観を吐露する若者が増えている。より自由かつ安心できる生活の基盤を手に入れたいと考え、わが国での就職を目指す人も増えているようだ。

 IT以外の業種でも雇用環境は厳しい。過剰生産能力の削減、ゼロコロナ政策や不動産バブルの崩壊、それらによる債務問題の深刻化によって、鉄鋼や不動産など在来分野の雇用環境が悪化している。

 15~64歳の生産年齢人口の減少を背景とする労働コストの増加、トランプ政権以降の米中対立などを背景に中国での生産を見直し、ベトナムなどのASEAN地域やインドなどに事業拠点を移す海外の企業も増えた。都市への人口流出に直面してきた内陸部では需要が急速に縮小均衡していると考えられる。黒竜江省鶴崗市のように事実上の財政破綻に陥る地方政府も出始めた。