目先の利害や立場の違いを乗り越えて
「オールジャパン」で取り組むべき

 冒頭、「レガシー企業が持つ経営資源を、より高い付加価値が期待できるところへ回すべきだ」と述べました。では、どのような企業や事業に集中するのが良いのでしょうか?

 まず考えられるのが、ある領域で世界的に高い競争力を誇る企業です。市場規模そのものが大きくないため名前は知られていませんが、グローバルでのシェアが非常に高く、世界のサプライチェーンにとって不可欠な存在となっています。

 スタートアップをはじめとする新しい企業も、経営資源を必要としています。「日本のスタートアップは小粒ばかりだ」と嘆く人もいますが、資金調達額だけを取っても世界とはケタが違うので、仕方がない面もあります。

 世界で勝負できる可能性を持つスタートアップに、ヒト・カネだけでなく、技術やネットワークなどの資源を回し、本気で勝たせにいくことを考えるべきでしょう。単独では難しければ、彼らの持つ技術など持てるケイパビリティを先行して、世界で戦う大企業と組み合わせ、勝ち筋を見いだす方法も有効です。

「新しいところ」へ資源を投入するには、「どこか別のところ」から引き上げなければなりません。前者はスタートアップが、後者は勝てなくなった大企業が、その筆頭候補です。

 ただ、そうした大企業の中にも、ポテンシャルの高い事業はあります。ならばその部分にフォーカスし、そうでない事業は戦えるうちに切り出して、売り手・買い手共に、事業本来の価値を引き出せるベストオーナーになればいい。冒頭に述べた「たたむ」議論により、こうした個々の企業を超えた資源配分により、勝てる形に組み替えることも可能です。

 当然ながらこうしたことは、市場の論理に任せるだけでは実現しませんし、危うさもあります。繰り返しになりますが、国もしっかりと関与し、「オールジャパン」で取り組むべき課題です。

 どのような産業構造であれば、これから縮んでいく国・日本は、厳しい環境をしたたかに生き抜けるのか?  世界にとって無視することのできない不可欠な存在であり続けられるか――。

 目先の利害や立場の違いを乗り越えて、皆でこれからの時代の「成長」戦略を再定義し、ビッグピクチャーを描いていく必要があります。