インフレはいつまで続く?
FRBにも確たる見通しはないか

 FRBも含めて、多くの専門家がインフレの見通しを誤った。コロナ対策の特に財政支出の影響、コロナによる消費者・労働者の行動の変化、資源価格の高騰とこれを加速したロシアのウクライナ侵攻といった問題が予想を難しくした。とはいえ、あらためて経済や市場の世界では、専門家というものが意外に頼りにならないことを確認しておくのも悪くない。もちろん、筆者にもインフレの先行きに関して確たる見通しがあるわけではない。

 さて、FRBもおそらく、どれだけ金利を引き上げたら、いつから、どのくらいインフレが抑えられるものなのか加減が分かっていない中で、何らかの効果の兆候を期待しながら利上げを実施しているのが実情ではないか。

 金融引き締め、すなわち「利上げ」は以下の経路で物価抑制に働くと考えられる。

 まず、預金金利や債券利回りが上がることで、消費者が、消費よりも預金や債券投資を選好するチャネルが考えられる。しかし、コロナ対策で現金を手にして、さらにこれまでの行動制限下で抑圧されていた状態から解放された消費者だ。少々の金利の上昇で消費を貯蓄に振り向ける効果が出るとは考えにくい。

 次に、金利の上昇によって株式や不動産などの資産価格が下落することによる、「逆資産効果」から消費の抑制に至るチャネルがある。これは、今起こりつつあると期待したくなる効果だが、例えばNYダウの値は、下がったとはいえ3万ドルの上にあり、コロナ前の19年の高値よりもさらに高い。資産価格の下落が消費を抑制して、物価上昇を抑えるに至る効果にも当面リアリティーが感じられない。

インフレの半分はウクライナ問題による
コストプッシュ・インフレが原因

 現在の米国のインフレの原因は大雑把に言うと、半分は資源価格の高騰によるもので、もう半分はコロナ対策による需要拡大の行き過ぎによるものだと考えていいだろう。

 米国政府は、武器産業やエネルギー産業、農業などが大いに潤っていることもあり、ウクライナの紛争が早期に終結することを願っていないように映る。戦局の先行きは予断を許さないが、現状ではウクライナ東部でロシアが支配地域を拡大している。