また、ロシアはわが国のメディアが期待するほどに経済制裁で困っていないようだ。現に、ロシアの通貨ルーブルの為替レートは侵攻前よりも上昇している。

 経済制裁は長く続くことになるだろうし、エネルギーや食糧などの価格への影響も続くと予想され、さらに上昇する可能性も否定できない。ただ、制裁を行っている側にインフレを通じて予想外に大きなダメージを与えつつあるのは皮肉なことだ。

 ただ、一つの好材料の「可能性」として、ウクライナでの停戦やロシアへの経済制裁の見直しなどで、資源価格への上昇圧力が緩和される場合があり得ることは頭に入れておきたい。ただし、前述のように、米国がそれを望んでいないように見える。

不況なしにインフレは終わるか?
最後はFRBがインフレと雇用を天秤に

 さて、金融引き締めの効果が物価に及ぶ第3のチャネルとして、不況が挙げられる。金利の上昇には、資金コストの高まりを通じてビジネス活動を抑制し、いわば不況をもたらすことによって物価を抑制する効果が考えられる。

 この効果は、三つの経路の中で最も時間的には実現が早いかもしれない。金利を上げていくと、企業の収益が圧迫されるし、借り入れが難しくなる分経済活動は抑制される。

 FRBも既に、ある程度の不況がなければ物価の抑制は難しいと覚悟を決めつつあるようだ。最後にはインフレと雇用を天秤に掛けるのだろうが、そこまでは時間が掛かりそうだ。また投資家は、金利の上昇の他に、企業の業績が悪化する局面を通ることを覚悟する必要があるということになる。

 昨今「40年ぶりのインフレ(率)」と言われるが、40年くらい前の経済学の教科書には、金融政策の効果が実体経済に表れるまでの「タイムラグ」が、1年半から2年くらいと書かれているものがあったと記憶する。

 金融引き締めが所期の効果を発揮して、物価抑制への道筋と共に利上げの先行きが見え、株価的に反転の条件が整うには、意外に時間が掛かるのかもしれない。