壁を超えたら人生で一番幸せな20年が待っていると説く『80歳の壁』が話題になっている今、ぜひ参考にしたいのが、元会社員で『島耕作』シリーズや『黄昏流星群』など数々のヒット作で悲喜こもごもの人生模様を描いてきた漫画家・弘兼憲史氏の著書『死ぬまで上機嫌。』(ダイヤモンド社)だ。弘兼氏のさまざまな経験・知見をもとに、死ぬまで上機嫌に人生を謳歌するコツを説いている。
現役世代も、いずれ訪れる70代、80代を見据えて生きることは有益だ。コロナ禍で「いつ死んでもおかしくない」という状況を目の当たりにして、どのように「今を生きる」かは、世代を問わず、誰にとっても大事な課題なのだ。人生には悩みもあれば、不満もあるが、それでも人生を楽しむには“考え方のコツ”が要る。本書には、そのヒントが満載だ。
※本稿は、『死ぬまで上機嫌。』より一部を抜粋・編集したものです。

【漫画家・弘兼憲史が教える】<br />死ぬ1日前までに全財産をきれいさっぱり使い切る作:弘兼憲史 「その日まで、いつもニコニコ、従わず」

自分のお金は使い切る

究極の理想をいえば、死ぬ1日前までに全財産をきれいさっぱり使い切る。そして、いよいよ人生の最終日を迎えたら、ポケットの中にある100円玉で水のペットボトルでも買い、ごくごくと飲みきった末に「ぷはー! 最高の死に水だな!」とうそぶいて死ぬ。こんな感じがいいですね。

もちろん、そんな都合よくいかないのは自分でもよく理解していますし、いろいろと現実的な事情も絡んできます。

自分がいつ死ぬのかわかっていれば、その日に向けて計画的にお金を消費できます。しかし、人間が自分の死期を正確に予期するのは不可能です。結果、お金を使い切る前に早々にこの世を去ることになったり、逆に使い切ってから生き長らえて苦しい生活を送ったりすることになるわけです。

好景気を謳歌した団塊の世代がやるべきこと

どのみち計画通りにはいきません。思いも寄らなかった出来事を体験するからこそ、人生は楽しいともいえます。そうした不確定要素を踏まえたうえで、ある程度の資産を持っている人は、最低限必要と思われる金額を残しておきつつ、適度に消費することを意識してほしいのです。

団塊の世代は、幸運にも好景気の時代を謳歌しました。下の世代と比べれば、預貯金にも余裕がある人が多いです。だったら、最後は感謝の気持ちも込めて、ため込んだお金を使い、経済を回すことに貢献してはどうでしょうか。

団塊の世代をターゲットにした旅行商品

日本では、お金を持っている団塊の世代をターゲットにしたマーケットに注目が集まっています。

ジャパネットたかたなどのテレビ通販を観ていても、その傾向を強く感じます。例えば、新型コロナが感染拡大する以前は、クルーズ旅行商品が頻繁に紹介されていました。JR九州が「ななつ星in 九州」という豪華クルーズトレインをヒットさせて以降、「TRAIN SUITE 四季島(トランスイートしきしま)」「TWILIGHT EXPRESS 瑞風(トワイライトエクスプレスみずかぜ)」といったクルーズトレインが話題となりました。

こうしたクルーズトレインブームを牽引してきたのも団塊の世代です。

消費を通じて最後まで人生を謳歌せよ

旅行商品以外にも、もともとは会議の録音用に開発されたICレコーダーを、家庭内で備忘録代わりに活用できると提案して、シニア世代にヒットした事例もあります。

今は、誰もがいつ何が起きても不思議ではない時代を過ごしています。気持ちが消極的になりがちだからこそ、消費を通じて高齢者も人生を最後まで謳歌すべきだと思うのです。

後生大事にお金を抱え込んだまま死んでしまったら、悔やむに悔やみきれません。やはり、お墓までお金を持っていくことはできないのですから。

※本稿は、『死ぬまで上機嫌。』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。ぜひチェックしてみてください。