壁を超えたら人生で一番幸せな20年が待っていると説く『80歳の壁』が話題になっている今、ぜひ参考にしたいのが、元会社員で『島耕作』シリーズや『黄昏流星群』など数々のヒット作で悲喜こもごもの人生模様を描いてきた漫画家・弘兼憲史氏の著書『死ぬまで上機嫌。』(ダイヤモンド社)だ。弘兼氏のさまざまな経験・知見をもとに、死ぬまで上機嫌に人生を謳歌するコツを説いている。
現役世代も、いずれ訪れる70代、80代を見据えて生きることは有益だ。コロナ禍で「いつ死んでもおかしくない」という状況を目の当たりにして、どのように「今を生きる」かは、世代を問わず、誰にとっても大事な課題なのだ。人生には悩みもあれば、不満もあるが、それでも人生を楽しむには“考え方のコツ”が要る。本書には、そのヒントが満載だ。
※本稿は、『死ぬまで上機嫌。』より一部を抜粋・編集したものです。

【漫画家・弘兼憲史が教える】<br />老後資金の不安で悩まないため<br />手放すべきたった2つの執着作:弘兼憲史 「その日まで、いつもニコニコ、従わず」

執着を手放す

【前回】からの続き

生活の縮小を図るにあたって、最初に取り組みたいのは、「見栄」や「プライド」を捨てることです。

団塊の世代は、おおよそ働き盛りの40代に空前の好景気である1990年前後のバブルを経験しました。その後の長期的な不況に苦しみもしましたが、多くは気に入ったクルマや洋服などを手に入れ、美味しいものを食べるなど、ある程度快適な生活を送ってきたと思います。

中には、サラリーマン時代の部下や後輩を自宅に招き、「素敵なご自宅ですね、いやはや立派です」などとおだてられた過去があるかもしれません。そんな若くて上昇志向だった時代の記憶が忘れられず、いつまでも現状の生活レベルに執着してしまうところに問題があります。

人目を気にしていたらお金は消えていく一方

「華やかな生活を維持したい」という思いの裏側にあるのは、見栄やプライドです。「年を取ってみすぼらしくなったと思われたくない」「セコいと思われたら恥ずかしい」――そんな見栄やプライドのせいで、ついつい財布の紐が緩みます。

人目を気にしていたら、お金は消えていく一方です。だから、まずは見栄やプライドを捨てることが大事なのです。

逆らわず、老いを受け入れる

前述した、お歳暮やお中元をやめようというのも、見栄やプライドを捨てることと関係しています。「たいして交流のない友人に向けて、いい格好をしても仕方がない」そう割り切って贈り物をやめれば、余計な出費は抑えられます。

また、いつやってくるかわからない友人や知人のために高価な家具やインテリアを揃えておくというのも、つまらない見栄です。「このテーブル、リサイクルショップで安く買ってきたのを自分で手を入れて再生させたんだ」なんていうほうが、よほど関心を誘います。

見栄やプライドを捨てるにあたっては、自然の流れに逆らわず、老いを受け入れる姿勢が大切です。「現状維持の生活をしたい」というのは、人生の下り坂に無理矢理逆行するようなもの。逆行して、もがけばもがくほど、余計に苦しくなるだけです。

年寄りが自覚すべき生き方

「若さ」が善とされ、アンチエイジングという言葉ももてはやされていますが、個人的には「若々しさ」より「痛々しさ」を感じてしまいます。心身の若さを保つことと、表面的な見た目の老いに抵抗することとは別の話です。

人間が老いて生活を縮小していくのは自然の流れであり、つまらない抵抗をしてお金を浪費するのは、残念な生き方だと思うのです。

お金をかけて無理に若作りしても、「いい年をしてみっともない」と思われるのが関の山です。年寄りにはシブくて慎ましい生活が似合っています。とにかく、逆らわずに生きるのが一番です。

※本稿は、『死ぬまで上機嫌。』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。