写真:韓国・ソウルにある世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の施設韓国・ソウルにある世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の施設 Photo:JIJI

旧統一教会と政界の関係が社会的な関心事となっている。しかし、実は旧統一教会の集票力は大したことがない。にもかかわらず、その影響力がここまで問題視されるのはなぜか。この謎について、自民党安倍派(清和政策研究会)に所属する議員の元秘書らの証言を基に、タネ明かしをしたい。私たちは統一教会の実態を大きく見誤っている可能性がある。(イトモス研究所所長 小倉健一)

統一教会の「集票力」は
創価学会と比べて桁違いに小さい

 安倍晋三元首相が「統一教会に恨みがある」とする山上徹也容疑者によって暗殺された。この事件を巡って、旧統一教会(現世界平和統一家庭連合、以下統一教会)による霊感商法、そして政界(特に自民党安倍派)の関係が大きな注目を浴びるようになった。

 識者からは「統一教会は日本から出ていってほしい」「政治と関わりを一切無くせ」という声も上がる。

 ただ統一教会は、公明党を支援する創価学会や他の宗教団体と比較して、それほど大きな規模の団体ではない。では、統一教会はいかにして自らの影響力を大きくさせていったのだろうか。

 まず、信者数を確認してみよう。日本の統一教会の信者数は公称56万人(宗教情報リサーチセンター、2015年)とされている。

 また、「旧統一協会(世界平和統一家庭連合)が自民党の井上義行参院議員(参院選当時は比例候補)を『信徒』だとして参院選で支援していた」(しんぶん赤旗・7月16日)との報道があった。その井上議員が今回の参議院選挙で得た票数は16万5062票だ。

 この結果と、過去に統一教会が支援したとされる選挙候補者の得票数を基に、ある政治アナリストは統一教会の影響力を次のようにはじく。

「統一教会は、6年前の参院選では臨床検査技師の組織候補・宮島喜文氏を支援した。宮島氏の当時の得票数は約12.3万票。3年前の参院選では、元産経新聞記者の北村経夫氏を支援し、約17.8万票だった」

「今回の参院選で井上氏が持つ個人的な票や他にも支援団体がいることを考えると、統一教会が実際に持っている票は日本全国で最大15万票程度。実際には12万票程度の可能性がある。300弱ある衆議院小選挙区で考えると選挙区当たりに最大500票しかない。500票では、市議会議員・区議会議員を1人出すのも難しいレベル」

 今回の参院選・比例代表における自民党の得票数は約1826万票で、15万票は全体の1%にも満たない。プロフィールから確認できる他党も含めた組織議員と比べると、郵便41.4万票、医師会21.3万票、薬剤師12.7万票、電力組合が23.9万票、自動車組合23.5万票、UAゼンセン21.2万票だった。

 一方、創価学会は公称で会員世帯数827万。そして公明党が今回の参院選で得た票数は、約618万票だ。

 いくら報道機関によって、大きく報道されているということを差し引いても、統一教会の組織の規模に比して、影響力が大きすぎるのではないだろうか。

 この謎について、自民党安倍派(清和政策研究会)に所属する議員の秘書と、別の安倍派議員の元秘書の証言を基に、タネ明かしをしていこう。私たちは統一教会の実態を大きく見誤っている可能性がある。