80年代・90年代生まれの高い離婚率、結婚願望ほぼなし

 中国では、2003年から離婚率が上昇、2013年から婚姻率が下落に転じた。特に離婚率が高いのは80年代生まれ、90年代生まれの「一人っ子世代」だと言われている。

 筆者の身近にも、離婚寸前という90年代生まれのカップルがいる。夫25歳、妻27歳。夫はゲーム好きだが、妻にゲームのプレー時間をきっちり管理されている。妻は夫にゲームの時間をほとんど与えないだけではなく、外出先や旅行先を決定する自由も与えない。夫は買い物から料理、皿洗いに掃除、洗濯までやらされている。妻の言い分は「女は子を産む大事な存在だから、大事にされて当たり前」というものだ。

 このような現象は中国では特に珍しくはないようで、国営企業を退職した60代の夫婦は「少なくとも私たちの世代は違う」と言いつつ、こう語った。

「これも一人っ子政策(筆者注:1979~2014年まで続いた)の影響です。『後にも先にもこの子だけ』――そういう思いが、父母の溺愛を過度なものにしました。甘やかされて育った子どもも結婚して親になるわけですが、性格的にも未熟でわがまま。結局、結婚生活は破綻してしまう。そういうケースがあまりに多いので、今の若い世代は最初から結婚願望など持たないのです」

 すでに中国は負の循環に陥っている。思えば「団結」こそが中国の国力の源泉だったはずだが、一人っ子政策の功罪は「夫婦の関係」や「家族の団結」にまで影響が及んでいる。現代中国の研究者である加々美光行・愛知大学名誉教授(今年4月逝去)は「家族は中国人にとって最後のとりで」だと語っていたが、これから進むであろう家族の崩壊は、中国の衰退を速める重要な要因となる可能性がある。