個人、メディア、インフルエンサー…手段による長所短所

 ここからは、個人によるネット上の告発、週刊誌などのメディアを通しての告発、あるいはインフルエンサーに情報をリークする形での告発、それぞれのメリットとデメリットについて考えてみたい。

 個人が直接的にネット上で情報発信をし、なんらかの告発を行う場合のメリットは、まずはそのインパクトだろう。

 メディアを通した場合、字数制限や媒体のフォーマットが踏まえられることから、良くも悪くも体裁が整えられ、情報が精査される半面、告発した当事者のリアルな語りがどうしても薄まりがちだ。

 しかし、当事者の語りの細部に宿る生々しさを、受け手は見逃さない。本人がYouTube動画で語ったり、ツイートを投稿したり、あるいはブログに自らつづったりする行為により、それを見る人は当事者が差し出す情報をありのままに受け取る。

 一方で、媒体を通さない告発は、発信者がその反応をダイレクトに受け取ってしまうデメリットもある。前述したように、それを最初から理解しての告発であればいいが、反響の大きさに恐れをなしてアカウントを消してしまうケースも過去にはあった。

 また、個人での発信の場合、その責任を個人がそのまま引き受けることになる。媒体が取材をして記事にする場合、「これをそのまま書いたら名誉毀損で訴えられかねない」という箇所はあらかじめぼかしたり、その内容に触れなかったりすることがある。告発者が「それでも書いてほしい」という場合でも、媒体の都合でそれがかなわないことがある。

 個人での発信の場合、責任は自分で引き受けるものの、出す情報を完全に自分でコントロールすることができる。リスクもある半面、当事者としては気持ちの折り合いがつけやすいだろう。

 それではインフルエンサーによる告発やスクープの場合はどうか。インフルエンサーが当事者と受け手の間に入るクッションとなる。ファンの多いインフルエンサーが緩衝材となることで、賛否両論を受けやすい当事者のキャラクターを底上げすることができる場合がある。

「あのインフルエンサーが取り上げているのだから、ちょっと話を聞いてみよう」という気持ちになりやすく、親近感も湧きやすい。テレビで芸能人が一般人をインタビューするような企画のネットバージョンと言えるだろう。