注目は「経産相」を巡る2人の人事
安倍派の主導権争いにも波及

 組閣に当たって岸田氏は内閣の「骨格」は残すと言った。その発言を受けて、前経産相の萩生田光一氏は「俺は骨格じゃなかったのか」と会見で発言したことが報じられた。自分の人事に対する不満の言明は異例だ。萩生田氏は閣僚を外されて、党の政務調査会長に任命された。

 そして新しい経産相には、安倍氏の死去後の安部派の主導権を萩生田氏と争っている1人と目される西村康稔氏が任命された。

 岸田氏が後任に安部派内のライバルを充てて萩生田氏に意地悪をしたようにも見える。また逆の見方としては、萩生田氏は内閣の縛りのない立場で党務や閥務に専念できるので安部派内での立場が有利になるのではないかとも言われている。確言できないが、実態は後者だろうか。1年たつと分かるだろう。

 さて、西村氏は就任早々の記者会見で原発の再稼働に意欲を見せた。原発活用の必要性は多くの人が認めるところだが、現時点で安全審査や自治体の同意がない原発にまで再稼働の意向を示したのはいかがなものか。

 本来は専門的な検討を要する問題であり、審査や自治体を飛び越して今の時点で新任の大臣が判断できる問題ではない理屈だ。余計な反発を招く可能性もある。一言で言って発言が「軽すぎる」のではないか。重要ポストであるだけに西村氏の政治的力量が心配だ。

 経産省の所轄範囲には課題が多い。まずは、エネルギーの確保とマネジメントの問題がある。その中に含まれるサハリン1、2を巡るロシアとの交渉も難題だ。

 加えて、世界的に米国側と中国・ロシア側に二分されてサプライチェーンが再編成される中で、円安を背景として、日本の産業は本来「ビッグチャンス」を迎えている。半導体製造に関連する業界などをはじめとして、これをいかに生かしていくかが経産行政には問われている。競争を阻害して企業を強くしない「護送船団方式」や「オールジャパン方式」を卒業した、時代に適応した産業政策を期待したい。