僕がこれを撮った時は「合法」だった

映画『時代革命』監督:キウィ・チョウ。8月13日(土)よりユーロスペースほか全国順次公開映画『時代革命』監督:キウィ・チョウ。ユーロスペースほか全国順次公開 https://jidaikakumei.com/ Photo:Haven Productions Ltd.

 香港ではこの8月に入ってからも、「中華圏映画界のアカデミー賞」と呼ばれる台湾金馬奨で最優秀短編アニメ賞を取ったアニメ作品に対して、映画検定で公開上映禁止判定が下された。全長7分半のうち雨傘運動を描いた1秒に満たないシーンが「違法占領行動の様子を再現した」とされて再編集を求められたが、製作者が拒絶したためだった。

『時代革命』は合法的に撮影された作品です。当時の香港ではそれを撮ることも製作することも合法だったんです。ですが、今後ますます社会が直面しているトラウマや現実や苦しみについて触れられなくなる。あえてそれに触れようとする作品はそれだけでアンダーグラウンド作品になっていく。つまり、『時代革命』もアンダーグラウンド映画になった。香港では上映できませんからね。だから、上映できる日本がうらやましいですよ。だって僕が監督した作品ですが、まだ映画館のスクリーンで上映されるところを見たことがないんですから。

 監督はカンヌ映画祭にも、また最優秀ドキュメンタリー映画賞を受賞した台湾金馬奨にも出席していなかった。香港を離れないのはコロナのせいなのか?

コロナも理由の一つですが、あと自分がどれだけ家族と一緒にいられるのかが分からないからです。そんな状態で、一人で海外に出たくない。できるだけ家族と一緒にいる時間をつくりたいんです。もう僕は引き返せない。僕は社会の現実を直視し、政治と向き合う道を選んだのですから。

周冠威(Kiwi Chow)
映画監督。1979年香港生まれ。2004年に香港演芸学院を卒業して商業映画の世界へ。2013年には同学院の映画製作修士課程を修了した。2015年にはオムニバス映画『十年/Ten Years』の一話『焼身自殺者』を監督。雨傘運動後の重苦しい思いを描いた『十年/Ten Years』は2016年の香港映画アカデミー賞の最優秀作品賞を受賞した。2020年に脚本・監督を務めた劇作品『幻愛』は香港電影評論学会大奨、台湾金馬奨などを受賞。『時代革命』は初めてのドキュメンタリー作品で、現場での撮影中にデモ隊にすごまれたとき、「『十年』を監督した」と思わず言ったところ、一挙に周囲が歓迎ムードになったというエピソードもある。