水際対策が徐々に緩和され、訪日観光が本格回復する兆しが見え始めている。コロナ禍でダメージを負った宿泊業界は、ポストコロナのインバウンド施策をどう打つべきか。オリエンタルホテルをはじめ、ヒルトンやシェラトンなどのグローバルブランドも含めて国内22ホテル、約6700室を運営するホテル経営会社である、ホテルマネージメントジャパンの荒木潤一代表取締役に話を聞いた。(ダイヤモンド編集部 柳澤里佳)

――人材の量・質ともに不足しているのが宿泊業界の大きな課題ではないですか。

「ホテル経営はもう小規模では生き残れない」22ホテル運営会社がそう激白する真意あらき・じゅんいち/1964年生まれ。88年ダイエー入社。98年ホテルセントラーザ博多へ出向。2003年同ホテル副総支配人。以降、複数のホテルで総支配人を歴任。15年神戸メリケンパークオリエンタルホテル総支配人。17年ホテルマネージメントジャパン特任部長。18年同社運営本部長。20年より現職。

 今のホテルマンって、ホテルが自動化・省力化されて昔と比べて「やりがい」が少なくなっているかもしれません。自動化・省力化自体は決して悪いことではないですが。だから今後はもっと、地域観光の担い手としてホテルマンが抜擢されていく状況を作りたい。

「昔のホテルマンのほうが勉強していた」といった意見も耳にします。それは、いろんな意味で余力があったからでしょう。各持ち場のスタッフはもちろん、ソムリエやバーテンダーも長い時間をかけて育成されていました。

 じゃあその時代に戻れるかというと、現実的ではない。マンパワーに限りがある時代、省力化は推し進めつつ、それとは別に付加価値を生み出すところはコストも人員も割いていく。両方やっていくしかないですね。

――従業員が約2000人と、業界では大手であるからこそ、人材戦略は重要になりますよね。

 従業員をほとんど直接雇用しているホテル会社で、われわれぐらいの規模のところは多くはありません。コロナ禍でエリアによって宿泊ニーズのある・なしが極端に分かれているので、当社のように直接雇用だと、非常にスムーズに人手をやりくりできるんです。

 沖縄はスタッフを確保するための激戦エリアなので、グループの他ホテルから相当数の応援を回しています。沖縄は本当に大変で、レストランを再開したくてもできないホテルがいっぱいあるんですよ。

――経営が立ち行かないホテルや旅館から、事業譲渡などの話はありますか。

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