銃による大量殺人事件が発生するたびに、銃規制の強化が叫ばれてきたアメリカ。昨年12月中旬に米東部の小学校で発生した乱射事件で多くの児童の命が奪われたのを機に、銃規制を強化すべきという声が前例のない規模であがっている。しかし、ロビー団体や法律の抜け穴も数多く存在し、どこまで規制が進むのかは微妙な情勢だ。(取材・文/ジャーナリスト 仲野博文)

悲劇は繰り返される

2期目のオバマ大統領に突き付けられた銃規制問題<br />乱射事件多発に悩む米社会が直視すべき法律の抜け穴なかの・ひろふみ
甲南大学卒業、米エマーソン大学でジャーナリズムの修士号を取得。ワシントンDCで日本の報道機関に勤務後、フリーに転身。2007年冬まで、日本のメディアに向けてアメリカの様々な情報を発信する。08年より東京を拠点にジャーナリストとしての活動を開始。アメリカや西ヨーロッパの軍事・犯罪・人種問題を得意とする。

 昨年秋の米大統領選挙で再選されたオバマ大統領が1月21日、首都ワシントンで開かれた2度目の大統領就任式に登場し、連邦議会議事堂前で演説を行った。オバマ大統領は演説の中で、「今こそ1つの国家、国民として共に行動しなければならないのだ」と、アメリカ国民の団結を力強く訴えた。

 しかし、2期目がスタートしたオバマ政権には問題が山積している。停滞を続ける国内経済や外交においてオバマ政権の手腕が問われる新たな4年の幕開けだが、この1ヵ月でアメリカ国内の最重要課題が大きな変化を見せた。

 銃規制をめぐる議論の再燃である。オバマ大統領が目指す「1つの国家」ではなく、分断するアメリカを象徴する銃規制問題。大統領選挙では議論されることすらほとんどなかった銃規制が、選挙後に全米で最も安全と考えられていた州で発生した無差別乱射事件によって、「もはや無視し続けられない問題」に発展してしまった。

 クリスマス直前の昨年12月14日、米東部コネチカット州ニュータウンにあるサンディフック小学校で痛ましい無差別乱射事件が発生した。児童と教職員26人が殺害され、容疑者は事件現場で自殺。容疑者の母親も別の場所で殺害されていた。