世界のIT分野はどのような転換点を迎えているのか

 各国のIT先端分野において、ビジネスモデルの変革が加速している。背景にはまず、リーマンショック後の世界経済の成長を支えたスマートフォンの普及と、SNSなどのプラットフォームを経由したサブスクリプション型ビジネスモデルの成長が、鈍化していることが挙げられる。

 2022年4~6月期まで、4四半期連続で世界のスマホ出荷台数は減少している。スマホの機能向上が人々に与える満足感は逓減したといえる。また、一定の料金を支払うことで特定サービスの利用権を享受するサブスクリプション・ビジネスの収益性は低下している。類似のサービスが乱立し、競争が激化したからだ。加えて、米欧を中心に世界各国で個人データ保護に関する規制が強化された。そうした結果、メタ(旧Facebook)などの広告ビジネスの収益性は低下した。

 その一方で、米国や中国でクラウド事業の強化に一段と集中する有力なIT先端企業が急増している。背景に、世界がウェブ2.0からウェブ3.0の時代へ向かっていることは大きい。

 ウェブ2.0では、人々は必要に応じてインターネットにアクセスし、情報などを得る。関連サービスはGAFA(Google、Apple、Facebook〈現meta〉、Amazon)、など一部の有力企業によって提供される。

 それがウェブ3.0では、人々は常にネットとつながる。例えば、リアルな世界で日々の業務をこなすと同時にクラウドなどのネット空間で「アバター(分身)」が他者と交流する。バーチャルな世界と現実が一体化する、「複合現実(Mixed Reality、MR)」が当たり前になるだろう。

 ウェブ3.0の構成要件の一つが、拡張現実=ARに関する技術だ。現実の社会にAR関連技術が作り出すバーチャルな世界を重ねることによって、より鮮烈な体験を人々に与える。そのための画像処理半導体などの製造技術の強化、ソフトウエア開発をめぐる競争が激化している。ソニーはそうした環境変化に対応するために、専用ゲーム機の「プレイステーション」を前提としたゲーム事業の運営を見直している。