「人の名前がすぐに出てこなくなった」「忘れ物が多くなった」「立ち上がった瞬間、何をしようとしていたのか忘れてしまうこともある」――40歳を過ぎる頃から、そんな“もの忘れ”を自覚することが多くなる。「えっ、もしかしたらアルツハイマー?」なんて不安が頭をよぎることも…。そんなアナタが参考にしたいのが、『世界一受けたい授業』(日本テレビ系)、『金スマ』(TBS系)、『体が硬い人のための柔軟講座』(NHK)などで話題のフィジカルトレーナー・中野ジェームズ修一氏の著書『10年後、後悔しない体のつくり方』(ダイヤモンド社)だ。
本書は、中高年はもちろん高齢者でも、「これならできそう」「続けられそう」と思えて、何歳からでも脳と体が若返る秘訣を明かした1冊。本稿では、本書より一部を抜粋・編集し、いつまでも脳が衰えない手軽にして実践しやすい方法を紹介する。
(監修:田畑クリニック院長 田畑尚吾 医師)

【『世界一受けたい授業』で話題】<br />脳を鍛えるのはやっぱり運動しかない…<br />「もの忘れ」を改善する!<br />正論にして王道の方法Photo: Adobe Stock

脳を鍛えるのはやっぱり運動しかない

【『世界一受けたい授業』で話題】<br />脳を鍛えるのはやっぱり運動しかない…<br />「もの忘れ」を改善する!<br />正論にして王道の方法中野ジェームズ修一
「理論的かつ結果を出すトレーナー」として数多くのトップアスリートやチームのトレーナーを歴任。卓球の福原愛選手やバドミントンのフジカキペア(藤井瑞希選手・垣岩令佳選手)、マラソンの神野大地選手の個人トレーナーほか、数々のオリンピック出場者を指導する。2014年からは青山学院大学駅伝
チームのフィジカル強化も担当。自身が技術責任者を務める東京都・神楽坂の会員制パーソナルトレーニング施設「CLUB 100」は、無理なく楽しく運動を続けられる施設として、幅広い層から支持を集め活況を呈している。著書は『10年後、後悔しない体のつくり方』『いつでも、どこでも、1回20秒で硬い体が超ラクになる! スキマ★ストレッチ』(ともにダイヤモンド社)など多数。

前回からの続き】 バランスボール以外にも、私の著書『10年後、後悔しない体のつくり方』第1章で紹介しているウォーキングなどの有酸素運動、第2章で紹介している筋トレにも、認知症の予防効果があります。

東北大学加齢医学研究所などの研究で、4週間の筋トレと有酸素運動を組み合わせたサーキットトレーニングで、認知機能が向上したという報告があります。対象となったのは、60歳以上の男女64人です。自らの記憶機能に問題を感じておらず、認知機能を妨げる抗うつ剤などの薬を使っておらず、「脳溢血」、重度の「高血圧」、「糖尿病」といった脳に関わる病気にかかったことがない人たちです。

この研究では、対象者を無作為に32人ずつ2つのグループに分けました。1つのグループは、筋トレと有酸素運動を交互に30秒間隔で繰り返すサーキットトレーニングを1回30分、週3回指導しました。もう1つのグループには、何も運動の指導をしませんでした。

トレーニングで認知機能が改善

そして4週間後、「実行機能」「エピソード記憶」「作業記憶」「読解力」「注意力」「処理速度」といった認知機能をテストしたところ、サーキットトレーニングをしていたグループでは、実行機能、エピソード記憶、処理速度の認知機能で改善が見られたのです。

なぜ、このように運動が脳に効くのでしょうか? 専門的な話になりますが、これには「脳由来神経栄養因子」(BDNF)「カテプシンB」という物質がかかわっています。

BDNFというのは、脳の神経細胞などが分泌する物質です。神経細胞の発生から成長、維持、再生などの機能に関与しています。BDNFがとくに高濃度なのは、大脳で記憶を司る「海馬」というところで、記憶や学習に関与しているという説が有力です。

有酸素運動や筋トレで神経細胞が活性化

マウスでの実験ですが、BDNFの発生量が低いと、学習能力が下がることがわかっています。人間でも、うつ病患者や重度のアルツハイマー病患者では、海馬でBDNFの量が低下しています。

有酸素運動や筋トレを続けていると、海馬などでのBDNFの分泌が増えてきますから、認知機能を上げるのに役立つ可能性が高いです。

長期間にわたる有酸素運動によって、海馬の神経細胞が増えたという報告もあります。かつて、脳の神経細胞は一度死ぬと二度と復活しないと考えられていましたが、現在ではBDNFなどの働きで新生することがわかっています。

筋トレは記憶と学習の脳機能に効く

もう1つのカテプシンBというのは、筋肉が分泌する物質です。筋肉は運動などの刺激により、「マイオカイン」と総称される物質を出していますが、カテプシンBもマイオカインの一種です。

カテプシンBは“脳の関所”ともいえる「血液脳関門」を通過して、記憶と学習の要となる海馬に作用してBDNFのレベルを高めてくれます。

そして、海馬での神経細胞の新生がうながされ、認知機能の向上が見込めるのです。

※本稿は、『10年後、後悔しない体のつくり方』より一部を抜粋・編集したものです。本書には、体が若返るメソッドがたくさん掲載されています。