私大文系入試は「機能不全」に?進む少子化と受験生の心構え年内入試に傾斜していく中堅私立大は、今後、独自の「日本史」「世界史」入試問題を作り続けることができるのだろうか(写真は東洋大学)

終わりの見えない少子化は、大学入試のあり方を根本的に変えていく。高校の進路指導もそれに合わせて変わる。新しい学習指導要領が本格的に反映されることで、入試問題自体も変わらざるを得ない。私立大は、今後も独自の入試問題を作り続けられるのだろうか。(ダイヤモンド社教育情報、人物撮影/平野晋子)

圧倒的な少子化がもたらす問題点

――石川先生のカリキュラムマネジメントとは、どのようなことを実際に行うのでしょう。

石川 カリキュラムアドバイザーとして、聖ドミニコ学園などの教育コンサルで関与しています。学校の指導係のようなもので、シラバスをどう授業に落とし込むか、授業時間数の案分や教え方など時間割づくりの管理や探究的な視点といった授業内容についての相談にも応じています。

 そのため、実際の授業を見て、「こういう問いを投げると面白いですよね」といったアドバイスをするようにしています。

後藤健夫後藤健夫(ごとう・たけお)
教育ジャーナリスト&アクティビスト。1961年愛知生まれ。南山大学在学中から河合塾に。大学卒業後に就職して以来、東京で勤務。その後、独立。早稲田大学や東京工科大学での入試関連業務に従事する一方で、経済産業省や自治体のプロジェクトなどにも参画。編書に、『セオリー・オブ・ナレッジー世界が認めた「知の理論」』(ピアソンジャパン)。

後藤 授業時間中に机の向きを変えてグループワークを行っても、それがイベント化するだけで、本質から外れてしまう。なぜそれを行うのか、という本質の部分に立ち返って考えないと。

石川 僕が見に行くと、そういうことをやったりする。それでは、これまで通り一方通行で教えた方がいいのではとなりかねない。日頃の授業をやってほしい(笑)。

後藤 生徒だけが戸惑ってしまう。

石川 目的の一つが教員の負担を下げることにあります。全部知っている必要はありません。そのマインドセットを変え、これまでもお話に出てきた網羅主義をやめることです。

――これから圧倒的な少子化ではないですか。

後藤 だから、財務省も教育に関する予算を増やすつもりがない。教員の手当はしてもね。文科省の予算がゼロサムと言われてもう20年が過ぎます。

石川 確かに。なかなか渋いです。

後藤 少子化により、地域によっては知らないうちに小学校が少人数クラスになってしまう。弁護士のゼロワン地域や医師と一緒で、これからは学校も偏在していきます。全学年がそろわない学校も出てきています。

 少子化で、大学入試の圧力がすごく緩くなってきています。日東駒専(日本・東洋・駒澤・専修)が、学校推薦型や総合型(旧AO)の選抜による年内入試に一所懸命になっているといいます。このレベルがそうなってくると、何が起きるか。高校生が学ばなくなる。受験勉強をしなくても入れる状況だからです。

 授業で教員が、「これは入試に出るぞ」と叫んだところで生徒はしらけます。受験勉強以外のことを学べば良いのですが、授業は受験対応。受験対応の授業は崩壊していきますし、生徒は何も学ばないで終わってしまう。

石川 年内入試への雪崩込みは、ちょっと過激になってきている感じがあります。早慶上理(早稲田・慶應義塾・上智・東京理科)やMARCH(明治・青山学院・立教・中央・法政)までは一般入試が主とはいえ、一般選抜入試が4割を切る状況になると、やばいかなと思います。

――高校の現場から見ても、これはゆゆしき問題なわけですね。

石川 現場は、そこに気が付いていない(笑)。この流れに関しては、気付いている人しか気が付いていません。とはいえ、みんな出口(大学合格実績)に向けて、最短距離で走ろうとしてきたので、これを変えることは大変でしょうね。