ソニーGは、21年4月にソニーからソニーグループへと社名変更し、あわせて組織体制の変更も行った。それからソニーGは、「人に近づく」モビリティ事業を将来の主力事業に育てることを決断したのだ。ソニーGとしてEV開発を行う「ソニーモビリティ」を設立する一方で、今年3月にホンダとモビリティ分野における戦略的提携に向けて基本合意し、9月28日に両社折半出資によるSHM設立に至ったのである。

 一方のホンダだが、2021年4月に三部敏宏社長が就任し直後に「2040年に全てのホンダ車をEVかFCV(燃料電池車)にする」という、いわゆる「ホンダ脱エンジン車」宣言で世間をアッと言わせた。

 これにはホンダの「お家の事情」も見え隠れした。ホンダはここ数年、主力の四輪事業の収益力低下に悩んできた。八郷隆弘前社長の体制下では四輪事業の立て直しが課題で、グローバル生産力の縮小(英国・トルコ工場閉鎖や国内の狭山工場閉鎖)を断行するといった“調整的”な経営に追われた経緯がある。

 三部体制としては、前体制が仕込んできた“成長の種”を受け取った上で、新たな方向性を内外に示していくことが求められたわけだ。

「脱エンジン車」宣言後も、電動化シフトを加速するとともに二輪・四輪事業の組織改革を断行したほか、今年4月の社長会見では、研究開発や電動化・ソフトウエア投資に今後10年で約8兆円を積極投資する方針を明示している。