同コホートの参加者のうち、生体インピーダンス法により筋肉量が複数回測定されている患者284人を解析対象とした。年齢により推奨される摂取エネルギー量が異なるため、解析は65歳未満(91人)と65歳以上の高齢者(193人)に分けて行った。なお、摂取エネルギー量が極端な患者(600kcal/日未満または4,000kcal/日超)、体組成に影響を及ぼし得るステロイドが長期処方されている患者、および追跡期間が6カ月未満や解析に必要なデータの欠落している患者は除外されている。
参加者の主な特徴は、65歳未満の群は平均年齢54.0±8.7歳、男性48.4%、BMI26.6±5.3kg/m2、骨格筋量指数(SMI)7.3±1.0kg/m2、HbA1c7.8±1.7%、糖尿病罹病期間9.2±6.8年。高齢者群は平均年齢72.2±5.2歳、男性56.5%、BMI23.8±3.9kg/m2、SMI6.9±1.0kg/m2、HbA1c7.2±1.0%、糖尿病罹病期間15.9±10.0年であった。
「食べる速さは?」との質問に、「かなり速い」または「やや速い」と答えた人を摂食速度が「速い」群と定義し、「普通」と答えた人を摂食速度が「普通」の群、「やや遅い」または「かなり遅い」と答えた人を摂食速度が「遅い」群と定義した。65歳未満では摂食速度が「速い」群50.5%、「普通」群42.9%、「遅い」群6.6%であり、65歳以上では同順に40.4%、38.3%、21.3%であった。
65歳未満群は1.6±0.6年、高齢者群は1.7±0.7年後に追跡調査を実施。年齢、性別、喫煙・運動・飲酒習慣、インスリン・SGLT2阻害薬の処方、摂取エネルギー量およびタンパク質摂取量で調整後の1年あたりのSMI低下率は、65歳未満群では摂食速度が「速い」群は0.67%、「普通」群は0.58%、「遅い」群は-1.84%であり、群間に有意差はなかった。一方、高齢者群では摂食速度が「速い」群はSMI低下率が-1.08%とSMIの上昇を認めたのに対して、「普通」群は0.85%、「遅い」群は0.93%とSMIは低下しており、摂食速度「速い」群との間に有意差が存在した。
次に、既報研究に基づき、年0.5%以上の筋量低下を「SMI低下」と定義し、「SMI低下」の発症について検討した。解析に際しては前記の交絡因子に加え、BMI、HbA1cを独立変数として設定した。その結果、65歳未満群では摂食速度は「SMI低下」と有意な関連がなかった。一方、高齢者群では、摂食速度「遅い」群と比較して「速い」群では、「SMI低下」のオッズ比(OR)が0.42(95%信頼区間0.18~0.98)と有意に低かった。摂食速度「普通」群はOR0.82(同0.36~2.03)と有意差を認めなかった。
65歳未満群では摂取エネルギー量および摂取タンパク質量が多いこと、HbA1c高値、および飲酒習慣が、SMI低下に対する有意な保護因子として抽出された。高齢者群では摂食速度以外の関連因子は特定されなかった。
以上より著者らは、「高齢2型糖尿病患者では、遅い摂食速度が筋肉量の減少と関連していた。サルコペニア対策の観点からは、摂食速度にも細心の注意を払う必要があるのではないか」と述べている。なお、早食いが筋肉量の維持に有利に働く機序としては、ゆっくり食べることでGLP-1やペプチドYYなどの食欲を抑制するように働くホルモンが分泌され摂取量が減ることや、食事誘発性熱産生が亢進することなどの影響が考えられるという。さらに、筋肉量が減少しているために嚥下機能が低下していて摂食速度が遅くなるという、因果の逆転の影響も想定されるとしている。(HealthDay News 2022年10月17日)
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