陰謀論者の増加と「リベラル政党離れ」が世界中でつながる根深い事情ハンガリーのオルバーン・ヴィクトル首相 Photo:Omar Marques/gettyimages

アメリカでは、民主党の支持基盤が安定しなくなった。ヨーロッパでも、リベラル政党の支持が薄まってきた。そして、日本でも同様に労働組合や低所得者層が、共産党、社民党、立憲民主党から距離をおくようになった。なぜ、これほどまでのリベラル政党離れが起きているのだろうか。そして、リベラル政党から離れていく人々は、どこに向かうのか。昨今、受け皿の役割を果たすようになってきているのが「陰謀論」だ。
※本記事は『ネイチャー資本主義 環境問題を克服する資本主義の到来』(PHP新書)の抜粋・転載です。

>>前編『環境問題の利害対立が一変、オランダで大気汚染対策に畜産農家が激昂した理由』から読む。

ニュー資本主義の浸透とリベラル政党の迷走

 こうした事態は、世界中のリベラル政党にとって、悩みの種となってきている。グローバル企業と機関投資家がオールド資本主義の次元にいた時代には、とりあえずグローバル企業と機関投資家を環境軽視と批判していれば、環境NGO、農家、労働者の結束は固かった。

 しかし今では、グローバル企業・機関投資家はニュー資本主義に移行してしまい、批判の対象にはしづらくなってしまった。あれほど犬猿の仲だったグローバル企業・機関投資家と環境NGOは、プラネタリー・バウンダリーの危機に対処するための社会変革(トランスフォーメーション)を実現するというビジョンを共有するまでになった。

 こうしてリベラル政党は、新たな批判の矛先を探さなくてはならなくなってしまった。そして気付いたら、自分たち自身が、今まで重要な支持層だった農家や労働者に批判される時代が来ていた。アメリカでは、民主党の支持基盤が安定しなくなった。ヨーロッパでも、リベラル政党の支持が薄まってきた。そして、日本でも同様に労働組合や低所得者層が、共産党、社民党、立憲民主党から距離をおくようになった。

 なぜ、これほどまでのリベラル政党離れが起きているのだろうか。かつてリベラル政党は、社会的弱者の味方を自称し、弱者を救済する政策を掲げていた。その点で、環境問題は社会的弱者が被害を受けることが多く、リベラル政党の重要な政策テーマだった。公害問題はその典型例だ。そして、環境規制を強化するためにグローバル企業と闘おうとする姿勢が、リベラル政党支持層からの共感を呼んでいた。