1ドル=150円時代の投資
大幅な円高への逆転リスクも

 最後に個人の投資について触れておこう。

 わが国で主に株式でリスクを取っている典型的な個人投資家は、外国株式への投資は株価の下落が為替の円安で相当程度相殺され、国内株式への投資は米国をはじめとする外国株に「連れ安」しているという状況だ。近年、「iDeCo(個人型確定拠出年金)」や「つみたてNISA(少額投資非課税制度)」などで投資を始めた初心者も同様の認識だろう。

 問題は、「外国株の下落を円安が救う」というパターンが必ずしも一般的に起こるものではないことだ。現状の米国による急ピッチの金融引き締めも、日本の金融緩和の継続も、長い目で見ると例外的なものであるはずなのだ。従って急激かつ大幅な円安も同様のことが指摘できる。

 投資は、20年、30年といった長期間で行うものだ。そのため、「株式のリターンは大きく上下するけれども、長期的には国債や預金を上回る(はずだ)」「為替レートは長期的には2国の金利収益を均衡させるように働くので、為替リスクを取ることは長期的には損でも得でもない(はずだ)」。そう割り切って、為替リスクのヘッジなしで外国資産(特に株式)を持ち続けることで、原則論としてはそう拙くはないはずだ。しかし、今回の円安の展開はいささか極端だ。

 円安の要因である日銀の金融政策の引き締め方向への変化が、例えば「2~3年後にあるかもしれない」と思う人は少なくないはずだが、この種の「かもしれない」は、意外なくらい前倒しにも後ろ倒しにもなり得る。

 やや短期的な(2~3年単位くらいの)投資としては、そろそろ一方的かつ大幅な円高も心配しておく方がいい時期になりつつある、と考えるべきだろう。

 投資家は、根強いインフレに対して米連邦準備制度理事会(FRB)の金融引き締めで不景気と株安が起こり、加えて日銀の政策変化で円高が起こるといった、「泣きっ面に蜂」的な状況があり得ることを覚悟する必要がある。

 しかし、その場合でも、投資家は「振り落とされずに、マーケットに居続ける」ことが正解になることが多いと申し上げておく。必要なのは覚悟であって、投資から逃げ出すことではない。

 理屈上は「だから、投資はもうかることが期待できるのだ」といえるのだが、投資には気苦労が多い。だが、正しく投資してしまえば(例えば、手数料の安い全世界株のインデックスファンドのみに投資すれば)、あとは気苦労だけでいいともいえる。