オートバイ買取事業で急成長したアイケイコーポレーションは、まだ設立11年。若い会社だけあって、人材育成の考え方も斬新でユニークだ。目標設定は1ヵ月ごと、それを記入したノートを常に持ち歩き、細かなPDCAサイクルで実現へ向けて動かしていく。それを通して成功体験を積んでほしいというのが社長の思いである。

来てくれた人を育てる以外になかった

加藤義博氏
株式会社アイケイコーポレーション代表取締役社長 加藤義博氏

 金融やマスコミのように、業種名だけで人が集まるところもあれば、そうじゃない業界もあります。私たちが会社を興したころのオートバイ買取業界は、まさに後者の典型でした。当時は、「バイク=不良」のイメージがまだまだ強く、そのなかでも当社は全く無名の個人商店のようなものでしたから、採用はあまりに大変でした。

 だから「人を選ぶ」どころではありません。来てくれた人を育てるしか方法はなかったんです。しかし面接の際に、私の夢とかビジョンとか業界の可能性を熱く語って、それに共感してくれるかどうか、その入り口の部分にはかなり力を入れました。知識や経験値は足りなくても素直さやハングリーさを持っているタイプが多かったので、言ったことを忠実に、教えたことを素直に吸収していってくれました。

 「とにかく育てるしかない」。その思いのもと、経営者として何よりも人材教育やビジョンの共有に時間を割きました。そして社会人としてのマナーから、実務知識、そして経営的なことまで、さまざまなことをあらゆる方法で伝え教えていきました。ですから当社は、人材育成の仕組みについてはかなりノウハウを溜め込んできたつもりですよ。

自分の目標・会社の
理念を書き込んだノート

 年度始めには、年度の目標設定や予算設定をします。でも、どれだけの人がそれをしっかり覚えていると思います? 何となく働いていると半年前に決めたことを即答できない人が多いですよね。

 そもそも自分の目標を即答できない人が、目標を達成できるわけがありません。ですから私たちは、管理職に自己の目標管理を記載させたオリジナルのノートを持たせています。それを開けば、すぐに自分と部署と会社の目標や現状が把握できるように。そしてそのノートには数値だけではなくて、会社の歴史とか理念とか創業時の思いとか、そういう今まで積み重ねてきたさまざまなことも同時に記載しています。

 まだ社員数が少ないころは、目の前で語り合って意思疎通を図ることや、価値観やビジョンの共有ができていましたが、社員が900名にもなってくると全員とコミュニケーションをとることはとても無理です。

 それでもまだ、最近までは全国の拠点を巡って、みんなと語り合う期間を集中的に設けたりもしましたが、それも限界になってきて、会社の方向性や本来の社風を共有できる仕組みづくりをより一層強化していかなくてはならなくなってきました。その一つの形がこのノートに表されているのです。