JA共済連ビル農協の保険事業の大元締めであるJA共済連。農協職員による共済の自爆営業が問題になっているが抜本的な是正策は打っていない

三重県のJA津安芸が、職員に残業代を支払っていなかったことがダイヤモンド編集部の調べで分かった。この農協では、職員が営業ノルマを達成するために本来、不要な保険に加入する“自爆営業”が横行している。JA津安芸以外でも、自爆営業が横行している農協で労働基準法違反が複数発生している。自爆とサービス残業の二重苦を職員に強いる“ブラック農協”は、人材流出に歯止めがかからなくなる大問題に直面している。(ダイヤモンド編集部 千本木啓文)

職員の2割が1年で退職したブラック職場
今年もトップ営業が続々退職

 共済(保険)の自爆営業が問題になっているJA津安芸で、職員のモチベーションをさらに下げる事案が発生した。

 JA津安芸は、ダイヤモンド編集部が全国の農協職員ら1386人から得たアンケートの回答に基づき作成した「JA共済“自爆営業”農協ランキング」で全国ワースト6位にランクインした農協だ(詳細は特集『JAと郵政 昭和巨大組織の病根』の#2『JA職員1386人が告発、共済「職員搾取営業」悪質度ランキング【24JA】1位は組合長に報酬700万の闇』参照)。

 アンケートに回答したJA津安芸の職員らは共済だけで平均月7万3542円を“自爆”していた。

 職員に自爆営業を強いるようなノルマ推進が行われた結果、JA津安芸では、2021年度に47人以上の大量離職が起きた。正職員は235人なので、1年で2割もの職員が退職したことになる。まさに異常事態だ。

 すでに労使間の信頼関係は損なわれていたが、10月14日に、離職者がさらに発生しかねない問題が浮上した。JA津安芸が職員に残業代を支給していなかったとして労働基準監督署が是正勧告を行ったのだ。

 次ページでは、労働法制などどこ吹く風の非常識な経営により、大混乱をきたしているJA津安芸の実態に迫る。また、JA津安芸と同様に自爆営業やサービス残業が横行している農協の危機的な状況を明らかにしていく。