岸田内閣・閣僚辞任ドミノで露呈、「清濁併せ呑んでこそ政治家」の大誤解Photo:Anadolu Agency/gettyimages

岸田内閣の支持率が下落し、30%を割り込んだ。「政治と宗教」「政治とカネ」の問題や失言で、閣僚が相次いで辞任しているのだから無理もない。かつて50%台の高支持率を誇った岸田内閣は、なぜ人気が急落するとともに、閣僚の「辞任ドミノ」を招いたのか。その本質的な要因を考察する。(立命館大学政策科学部教授 上久保誠人)

宗教・カネ・失言…問題続出で
「閣僚の辞任ドミノ」止まらず

 岸田文雄内閣の支持率下落が止まらない。マスメディアによる直近の各種世論調査では、内閣支持率が危険水域と呼ばれる30%を割り込んでいる。「不支持率」が50%を超えた結果もある。

 内閣発足時から今夏まで、岸田内閣の支持率は50%台で推移していた。そして岸田首相は、2021年の衆議院議員総選挙(衆院選)と22年の参議院議員通常選挙(参院選)で連勝。日本政治では珍しく、国政選挙がない「黄金の3年」を手にした。

 にもかかわらず、内閣支持率が急落するのは異常事態だ。

 事の発端は、「安倍晋三元首相銃撃事件」であった。容疑者の母親が旧統一教会信者だったことから、政治と旧統一教会の関係が次々と明るみに出た(本連載第309回)。

 それ以降、自民党議員が旧統一教会関連の会合に出席したり、祝電を送ったりしていたケースが続々と発覚した。

 中でも、山際大志郎・前経済再生担当相は、教団との関係について新たな疑惑が浮上するたびに「記憶していない」「覚えていない」を連発。後から事実を追認する「後出し」対応を繰り返して批判を浴びた。山際氏は結局、最初に事実が発覚してから2カ月後の今年10月に辞任を余儀なくされた。

 さらに、宗教関連だけでなく「失言」や「政治とカネ」の問題も目立ち、いわゆる「閣僚辞任ドミノ」が止まらない状況だ。

 11月に入ると、葉梨康弘・前法務相(当時)が「法務大臣は死刑のはんこを押したときだけニュースになる地味な役職だ」と、法務大臣の職や死刑を軽んじる失言をした。岸田首相はギリギリまで葉梨氏を続投させる意向を示したが、かばいきれず、事実上の更迭となった。